2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられます。気になるのは、離婚した場合の子どもの養育費です。離婚の際に、「成年に達するまで支払う」という取り決めがされていることがあり、困惑が広がっています。
弁護士ドットコムにも、未成年のお子さんが3人いるというシングルマザーの女性から、相談が寄せられました。女性は18歳になってすぐに子どもが働かない限り、最もお金がかかる時期であり、養育費を受け取れないと困ると訴えています。
「公正証書で20歳になるまでと明記はしてありますが、調停をしないと変更できないのか、しなくても18歳までとなってしまうのか知りたいです」といい、調停を起こされて支払いが打ち切られることを心配しています。
こうした不安の声を受け、法務省は10月、「成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について」という文書を発表しました。18歳になったら養育費はどうなるのか、法務省の文書をもとに、菅野朋子弁護士が解説します。
●「養育費の支払期間が短くなる可能性は低い」
法務省の文書によると、「子が成年に達するまで養育費を支払う」という取り決めがあっても、「取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからしますと、成年年齢が引き下げられたとしても、従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます」とあります。しかし、相談者が心配するように、調停を起こされてしまった場合は、成人年齢の引き下げを理由に、養育費の支払い期間は短くなる可能性はあるのでしょうか?
「法務省と裁判所とで考え方が異なる可能性はあるとはいえ、法務省が見解を発表しており、また、取り決めた時は改正前の法律の下で取り決めている以上、基本的には改正後、養育費の支払期間が短くなる可能性は低いと考えます。なお、調停はあくまでも合意の上で成立するので、強制的に短くなることはありません。
もっとも、今後、新民法の施行までに取り決める際、心配であれば、『20歳に達した日が属する月まで』と明確に定めておけばよいでしょう」
●「今後は、数字で明確に終期を決めることが望ましい」
そもそも、養育費の支払い期間はどのように決められるのでしょうか? 成人年齢が実際に引き下げられる2020年4月以降は、養育費について「18歳まで」という取り決めが増える可能性はあるのでしょうか?
「現状は、裁判所では、原則として成人(20歳に達した日が属する月)までとしています。協議や調停など当事者の意思で決める場合は当事者の自由ですが、原則は成人までと決めることが圧倒的に多いです。
もっとも、養育費は、本来、子が未成熟で経済的自立が難しい場合に支払われるもので、未成熟=未成年、ではありません。子が将来、どの時点自立できるかは不明なため、成人をスタンダードは指標にしているにすぎません。
現状では、協議や調停では、高い大学進学率をふまえ、原則は成人までとし、『ただし、大学進学した場合は22歳に達した後の最初の3月まで』と決めることが非常に多いです。裁判や審判でも、事情によっては、成人後の大学生にも養育費が認められる場合もあります。
一方で、高校を卒業してから就労した場合は18歳に達した後の最初の3月まで、と決めることもあります。もっとも、今後、18歳が成人となると、高校生の段階で成人になるケースが非常に多くなることから、成年年齢の引き下げ後、従来どおり、養育費を原則成人まで、としてよいのかは、現在、家庭裁判所でも議論されているようです。
これはあくまでも私見ですが、未成熟かどうかという上記の本来の考え方からすれば、少なくとも、高校生の段階で養育費が支払われなくなるような運用はしないのではないかと考えます。
いずれにしろ、今後は、『成人まで』という表現ではなく、『原則18歳に達した後の最初の3月まで。ただし、大学進学した場合は22歳に達した後の最初の3月まで』といったように、数字で明確に終期を決めておくことが望ましいです」