夫のバッグから見知らぬ空っぽの祝儀袋(出産祝)が出てきたーー。お金にルーズな夫に悩む女性の投稿が、ネットの掲示板で議論となった。
女性は、1歳の子どもが夫のバッグで遊んでいたことから、偶然空の祝儀袋を発見した。女性もよく知る夫の友人からのものだった。女性は、中身のお金は当然夫が使い込んだと考えている。夫は以前からお金にルーズなことがあり、今後こうしたことが起きれば離婚も視野に入れているそうだ。
そもそも、夫が友人から受け取ったご祝儀は夫婦の財産なのか、それとも夫個人が自由に使えるのか。また、一般的にお金に関してルーズであるという点は、離婚の理由になるのか。北島健太郎弁護士に聞いた。
●「出産祝い」は夫婦ふたりのものなのか?
「『出産祝い』は法的にみると、贈与契約の一つと考えられます。
一般的に、夫婦のどちらかが、個別に贈与を受けた場合、それは当該夫婦のどちらかの個別財産と評価され、通常は財産分与の対象となる財産とは評価されません。つまり、もらった個人の財産ということになります」
北島弁護士はこのように述べる。では、友人からもらった出産祝を妻に告げずに使い込んでも、問題はないということか。
「そうとは言い切れません。それはあくまで原則論です。
本件の場合、相談者ご自身もよく知る夫の友人から『出産祝い』としてご祝儀をもらっていることから考えて、ご夫婦二人に渡すつもりで、ご祝儀を夫に渡したと考えるのが適切でしょう。
そうなると、ご祝儀自体はご夫婦の共有財産として、ご友人の方からもらったものと考えるのが適切だと思われます」
●離婚の理由にはなるのか?
そうすると、夫は二人で相談して使うべきお金を、勝手に使い込んでしまったことになる。相談者は離婚も考えているようだが、離婚の理由にはなるのだろうか。
「もちろん、協議離婚であれば、離婚原因を問いませんので、金にルーズだからという理由でも離婚できます。
問題は、裁判になった時離婚原因として認められるかという点です。裁判上の離婚原因として、法的には、5つの原因が定められています。
(1)不貞行為、(2)悪意の遺棄、(3)3年以上の生死不明、(4)強度の精神病で回復の見込みがない、(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由、の5つです。
(1)~(4)に当たらないことは明らかなので、問題は、(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由、に該当するかということになります。
ただ、夫の浪費が激しい等の理由で、夫婦関係が破たんしていると認められなければ、夫が勝手にご祝儀の金を使う程度のことでは、婚姻を継続しがたい重大な事由には当たらないと判断されると思います」