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えっ、児童手当と学資保険は「財産分与」の対象なの? 離婚前に慌てないよう管理を!
(Graphs / shimi / PIXTA)

えっ、児童手当と学資保険は「財産分与」の対象なの? 離婚前に慌てないよう管理を!

夫婦円満な生活を送るためにも、できれば事前にトラブルの芽は摘んでおきたいものです。そこで、年間100件以上離婚・男女問題の相談を受けている中村剛弁護士による「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」をお届けします。

連載の第24回は「児童手当は財産分与の対象って知ってる?」です。児童手当や学資保険などは「子どものための財産」だと思っていませんか。実は、これらは財産分与の対象になります。

さらに、中村弁護士は「子ども名義の口座に預けていても、実質的に夫婦で協力して得た財産であれば、財産分与の対象とされます」と注意を呼びかけています。

●子ども名義の口座でも財産分与の対象になる可能性がある!

今回は、財産分与について、誤解が多い点についてお話ししたいと思います。特に、子どものための財産だと思っていたら、「これも財産分与の対象になるの!?」となりうるケースについて、ご説明したいと思います。

子どもが生まれた後、子ども名義の口座を作って管理されている方も多いと思います。将来、離婚することになった場合でも、子ども名義の口座は夫婦の財産ではないから、財産分与の対象外だと考えていらっしゃる方が一定数います。

しかし、子ども名義の口座だからといって、ただちに財産分与の対象から除外されるとは限りません

たしかに、子どもの固有の財産であれば、財産分与の対象から除外されますが、子ども名義の口座に入金されていても、実質的には夫婦の共有財産を子ども名義の口座に入れているだけというケースも多々あります。

財産分与においては、名義がどうなっているかにかかわらず、実質的に夫婦で協力して得た財産か否かが問題とされます。そのため、子ども名義の口座であっても、実質的に夫婦で協力して得た財産であれば、財産分与の対象とされてしまうのです。

●児童手当は財産分与の対象となる!

財産分与の対象外だと誤解されているものとして多いのは、「児童手当」です。よく聞くケースとして、「児童手当が振り込まれるたびに、子ども名義の口座に移して貯金してきた」というものです。

このようにして貯めてきたお金について、「児童手当は子どものためのお金なんだから、財産分与の対象外ではないか」と主張される方がいます。もちろん、双方合意の上で、財産分与の対象から外すことはまったく問題ありませんが、法的には、児童手当を貯めてきたお金も財産分与の対象となります。

児童手当は、児童手当法4条1項に基づいて支給されますが、児童手当を受ける権利を有しているのは、子ども自身ではなく、子どもを監護する者(多くの場合は親)とされています。つまり、児童手当をもらっているのは、子どもではなく親なのです。自治体が子育てをおこなう親を経済的に支援することによって、子どもの健やかな成長を目指しているのです。

実際上の運用も、児童手当を受け取る口座として、子ども名義の口座を指定することはできず、世帯主名義の口座でなければならないとされているのが一般的です。なお、基本的には収入が高いほうの口座を指定しなければなりませんが、別居後(住民票上世帯が分かれた後)は、実際に子どもの監護をおこなっているほうの口座を指定することができます。

児童手当を使わないまま、子ども名義の口座に移したとしても、それは、親がもらっているお金を子ども名義の口座に預けているにすぎませんから、基本的には、財産分与の対象となってしまいます

そのため、将来離婚を考えているのであれば、児童手当を子どものために貯金して、結婚前に貯めた自分の預貯金(これは特有財産として財産分与の対象から除外される可能性があります)を取り崩して生活費に充てる、ということなどはお勧めしません。それは、財産分与の際に、相手の取り分を増やすだけの行為となってしまいます。

●学資保険も財産分与の対象に!

将来、子どもが大学等に入学する際に多額のお金が必要になる場合に備えて、学資保険に加入されている方も多いと思います。

離婚の際にも「これは子どもが将来大学に入学するときなどに備えて貯めたものだから、財産分与の対象から除外すべきだ」と主張されるケースがあります。これは認められるのでしょうか?

学資保険は、一般的に、親が契約者となり、親が保険料を支払っているケースが多いと思います。このようなケースでは、基本的に財産分与の対象になります。親が働いて得たお金(夫婦で協力して得たお金)で保険料を支払い、積み立てているものになるため、夫婦で協力して得た財産だと判断されるのです。

ただし、祖父母が孫のために学資保険に加入し、祖父母が保険料を支払っていたようなケースの場合、親が保険料を支払っているわけではありませんので、夫婦で協力して得た財産とはいえず、財産分与の対象外となる場合もあります。

●お祝い金も場合によっては財産分与の対象となることも

祖父母などからもらった出産祝いや入学祝い、進級祝いなど、各種お祝い金については、その趣旨によります。

子どもに対しての贈与と評価できる場合は、子どもの固有の財産として財産分与の対象から除外される可能性が高いと思います。

一方、子どもが生まれたり、入学することによって、いろいろと費用がかさむことから、その費用として、祖父母からお金を渡されるケースもあります。このような場合は、夫婦共有財産として、財産分与の対象となる可能性があります。

●夫婦共有財産と混在させないように注意!

お年玉、お小遣いなど、祖父母や親から子どもに対して贈与されたお金や、子どもがアルバイトをして貯めたお金などは、子どもの固有の財産として、基本的に財産分与の対象外となります。

しかし、そのようなものが入金された子ども名義の口座で、婚姻生活維持のための費用(特に、子どもが通う塾や習い事の費用など)を支払っていたり、夫婦共有財産となるようなお金(たとえば、児童手当や、塾や習い事の費用の支払いなどのために親が入金したお金)が子ども名義の口座に混在しているような場合、お年玉などを含めた残高が、夫婦の共有財産とされてしまう可能性があります。

民法762条2項において、「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する」と規定されているためです。

そのため、お年玉やお小遣い、祖父母から子どもに対する贈与金(相続対策でおこなわれるようなものなど)のように、明らかに子どもの固有の財産と考えられるものについては、混在を避けるために、別の口座を作って入金しておくほうが無難だと思われます。

●夫婦の財産とは分けて管理を

子ども名義の口座に預けているからといって、当然に財産分与の対象から除外されるとは限りません。後から「こんなものまで財産分与の対象になるなんて!」と慌てることのないように、子どもが幼いうちからきちんと夫婦の財産とは分けて管理することをお勧めします

また、何が夫婦共有財産になるのか、何が子どもの固有の財産になるのか、ということを正しく理解した上で、管理するようにしてください。

(中村剛弁護士の連載コラム「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」。この連載では、結婚を控えている人や離婚を考えている人に、揉めないための対策や知っておいて損はない知識をお届けします。)

プロフィール

中村 剛
中村 剛(なかむら たけし)弁護士 中村総合法律事務所
立教大学卒、慶應義塾大学法科大学院修了。テレビ番組の選曲・効果の仕事を経て、弁護士へ。「クライアントに勇気を与える事務所」を事務所理念とする。依頼者にとことん向き合い、納得のいく解決を目指して日々奮闘中。

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