未成年の子どもたちにとって、両親の離婚は深刻な問題だ。精神的に大きなショックがあるうえに、父と母のどちらについていくかという厳しい選択を迫られることが多いからだ。渦中の子どもに、どんなアドバイスができるだろうか。
自分で判断できる年齢になると、父母どちらかへの思いというよりも、教育費などの問題から「経済力がある親」を選ばざるをえない子もいるだろう。場合によっては、転校のことも考えなければならないかもしれない。
本来ならば、親が子どもの相談相手となるべきだが、自分たちの問題であるがゆえに、適切な助言は難しい。そんな状況にある子どもから、「お父さんとお母さんのどっちについていったらいいの?」とたずねられたら、どう答えるのがいいのだろう。離婚問題にくわしい田中真由美弁護士に聞いた。
●「親権者」の指定は、子どもの意思が尊重される
「両親の離婚に際して『親権者』を指定する場合、子どもの意思が尊重されます」
このように田中弁護士は切り出した。
「15歳以上の未成年については、法律上、家庭裁判所はその子の意向を確認することが義務づけられています。また、15歳未満の子であっても、調査官が子の意向を確認します。さらに、家裁が介入しない協議離婚であっても、子どもの意思を尊重しなくてはなりません」
しかし、どちらの親についていったらいいのか、子どもが選ぶのは簡単でないだろう。
「はい。子どもにとって、両親の離婚は、それだけで精神的に大きな負担です。そこに、父と母のどちらについていくのかを選ばなければならないという負担が重なるのです。このことを、周りの大人は考慮すべきです」
では、周りの大人は、どんな説明をしてあげるのがよいのだろうか。
「父と母のどちらかが一方が親権者になることで、転校が必要になるなど、これまでの生活に変化が生じる場合があります。その可能性について、やわらかく説明してあげるとよいでしょう」
●大事なのは、子どもが精神的に安定できるかどうか
経済的な面でも、生活に変化が出る可能性があるが、この点はどうだろう。
「経済的側面での違いについては、養育費などで調整が可能です。大切なのは、一緒に生活したときに、子どもが精神的に安定できるかどうかだと思います」
たしかに、子どもの心の安定が一番大事だろう。
「夫婦が離婚しても、その子どもとは、『父』または『母』という関係が続きます。どちらの親と別々に暮らすようになっても、親子としての交流は可能だということも、説明してあげるとよいでしょう」
親が離婚するという逆境に置かれる子ども。その周りにいる大人は、子どもの心に寄り添うようなアドバイスを心がけたい。