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57歳夫「オレは役者になる」と会社を退職! 呆れ果てる家族、妻は「離婚したい」
写真はイメージです(metamorworks / PIXTA)

57歳夫「オレは役者になる」と会社を退職! 呆れ果てる家族、妻は「離婚したい」

「夫が『役者になる』と言って、30年勤めた会社を退職しました。離婚を検討しています」。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられています。

相談者によると、夫は「すべてのローンを支払い、子どもも成人して定職についたから、親の役目は終わった。余生を楽しみたい」と主張。現在は、俳優養成学校に通うかたわら、ときどきアルバイトをしつつ、お酒三昧の自由な生活を送っているといいます。

経済的に余裕があれば、許せたのかもしれません。ただ、老後の蓄えも不十分な中で、一切相談もなく会社を辞めてきた夫に対し、相談者は不信感をつのらせるようになりました。子どもたちも呆れ果てているようです。

相談者は離婚を検討していますが、もし夫が話し合いでの離婚に応じなければ、調停や裁判となります。自分の夢を追う夫との離婚は認められるのでしょうか。小澤和彦弁護士の解説をお届けします。

●性格や価値観の不一致は、離婚理由になる?

ーー相談者は「夫の考え方が理解できない」といいます。このような性格や価値観の不一致は、離婚理由として認められるのでしょうか。

今回のケースのように、「夫の考え方が理解できない」といった性格や価値観の不一致は、離婚したい理由としてよく主張されます。

しかし、そもそも妻と夫は別々の人間なのですから、性格や価値観が違っていて当然です。たとえ、夫婦の性格が正反対でも、双方の努力によって円満な夫婦関係を修復できる可能性があれば、離婚は認められないでしょう。

価値観や性格の不一致により、離婚が認められるのは、夫婦関係が修復できないほど破たんしている場合です。夫婦関係の破たんを証明するには、長期間の別居をしたり、夫婦喧嘩をしたときの録音や日記を証拠として裁判所に提出するなどの方法があります。

また、「過去に暴力をふるわれた」「家に生活費を入れない」など他の要因と組み合わせることによって、離婚が認められやすくなるかもしれません。

●夢をただ追う夫…場合によっては、離婚が認められる可能性も

ーー今回のケースの場合、離婚が認められる可能性はあるのでしょうか。

今回のケースで、夫が将来、役者になることをどのくらい真剣に考えているのか、本当に役者になれるのか、といった点については、正直なところ、誰にも判断できません。晩年になってから、役者として成功を収めている人もいないわけではないですし、「夫の考え方が理解できない」というだけでは、離婚理由になるとはいえません。

そもそも妻の不満・不安は、自分に何の相談もなく、夫が退職や今後の道を勝手に決めてしまったことにあるのではないでしょうか。夫が役者を目指すという考えは、妻にとっては突拍子もないことだったでしょうが、もし、夫から真剣な相談の一つもあれば、妻の感情も違っていたかもしれません。

ところが夫は、妻に相談せず、勝手に退職をしてしまいました。これでは、妻が「私のことを信頼してないの?」「家族なんてもうどうでもいいのね」と思っても仕方がないでしょう。

夫婦は生活共同体として経済的に一体ですから、夫が退職後、どんな進路を選ぶかということは、当然ながら妻にも影響を及ぼします。「夫婦としてどのような老後を送りたいか?」といった生活設計については、本来であれば夫婦間のきちんとした話し合いが必要なはずです。

しかも、夫は退職後、ほとんど働かずに、役者になる夢をただ追っているということです。これは、妻にとって、経済的にかなりの不安を生じさせる行動といえます。夫の勝手な行動が原因で、生活が困窮し、妻が夫に愛想を尽かして夫婦関係が修復不可能になった場合、「婚姻を継続しがたい事由」があるとして、離婚が認められる可能性があるでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

小澤 和彦
小澤 和彦(おざわ かずひこ)弁護士 弁護士法人東京多摩法律事務所
第二東京弁護士会多摩支部 両性の平等委員会委員、東京都西東京市男女平等参画推進委員会副委員長。

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