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働かず、家族に暴力をふるう「ニートの息子」…家族は追い出すことができるのか
写真はイメージです(yongshan / PIXTA)

働かず、家族に暴力をふるう「ニートの息子」…家族は追い出すことができるのか

「迷惑ばかりかけているニートの家族を追い出すことはできますか」。弁護士ドットコムに、このような相談が多数、寄せられている。

その一部を紹介したい。

「バイトをしても、お金がたまったら辞め、無くなったらまたバイトするを繰り返しており当然貯金もないため、生活費や保険、諸々の税金は全て親の私たちが払わされています」(Aさん)

「昔から気にくわないことがあったりすると兄弟に対して暴力を振るう人間です。兄は既に28歳で、親が養う義務はないと思います。兄を家から法的に追いだす方法はないのでしょうか? また、長男とそれ以外の家族の縁を法的に切る方法はないのでしょうか?」(Bさん)

このようなケースで、家族はどう対応すればよいのだろうか。河内良弁護士に聞いた。

●親の扶養義務はどこまで?子どもが「成熟しているか」が重要な要素

ーーそもそも、親は子どもに対して、どのような義務を負っているのでしょうか。

「まず、親であり子であるということは、法律上は『直系血族』ですので、お互いに扶養する義務があります(民法877条1項)が、それ以外のことは法律で明確には定められておらず、実務上の運用を参考にせざるを得ません。

また、扶養を受ける者と扶養をする者の間で、扶養の内容や程度について見解の対立がある場合には、家庭裁判所による扶養調停(不調の場合は審判)の手続を利用し、裁判所の関与のもとで決めるほかに方法がありません。

一般的には、親の子に対する扶養義務は、特に子が未成年である間は重いものとされ、親自身の生活水準をある程度犠牲にしても果たすべきものと解されています。

しかし、子が成熟(「成年」ではない)している場合には、親の子に対する扶養義務は、前述のような重いものではなく、あくまで、親自身の生活に余裕がある範囲で果たせばよいものと解されています」

ーー単純に年齢ではなく、経済的な自立が期待できるかなど「成熟」度合いが重要な要素ということですね。

「はい。問題は、子が成熟しているかどうかです。ただこれも、当事者間に対立がある場合には一方の意向だけで勝手には決められず、最後は家庭裁判所の判断を仰ぐことになります」

●困ったら、早期に裁判手続の利用を

ーー家族に迷惑をかける行為をした場合、追い出すことはできますか。

「結局のところ、親が所有権(自己所有の家の場合)もしくは賃借権(賃貸家屋の場合)を有する家から、その権利を行使して子を追い出す(=退去明渡しを求める)ことができるかという問題に尽きます。

扶養の内容および程度を定める一環と理解するなら、親の側から家庭裁判所に扶養の調停を申し立てることができますし、単純に明渡しを求めるなら地方裁判所もしくは簡易裁判所に明渡請求訴訟を提起することもできます。

最終的に追い出すことができるかどうかは、弁護士が決められることではなく、裁判所が決めることですから、早期に裁判手続を利用されることをおすすめします」

プロフィール

河内 良
河内 良(かわち りょう)弁護士 河内良法律事務所
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。

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