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風呂場に布団、旅館水浸しに 威力業務妨害罪に問われた容疑者の「故意」どう立証?
画像はイメージです(kahon / PIXTA)

風呂場に布団、旅館水浸しに 威力業務妨害罪に問われた容疑者の「故意」どう立証?

兵庫県内の旅館で、客室の風呂場から水をあふれさせ、部屋を11日間使用不能にしたとして、大阪府堺市の男性(38)が7月4日、威力業務妨害の疑いで逮捕された。

地元の神戸新聞NEXTによると、事件は3月4日から5日にかけて発生。ユニットバス内に布団を詰めて、水浸しにしたと見られている。男性は「旅館の対応に腹が立った」など、一部容疑を認めているそうだ。

極めてレアだろうが、可能性でいえば、水道トラブルなどで部屋が水浸しになってしまうこともありえる。一般的に部屋を水浸しにすると、犯罪になってしまうのだろうか。威力業務妨害の分かれ目は何か、東山俊弁護士に聞いた。

●威力業務妨害罪には「故意」が必要

ーー部屋の水浸しにしてしまったら、即犯罪でしょうか?

威力業務妨害罪というのは、暴行、脅迫を行ったり、権力や地位を利用したりして、業務を妨害する罪です。成立には「故意」が必要とされています。

そのため、仮に部屋を水浸しにしてしまったとしても、旅館の業務を妨害するつもりがなかったような場合、故意が争点になることが考えられます。

今回のケースでも事情によっては、「故意がない」として無罪になる可能性はゼロではありません。

ーー捜査機関はどんなところから故意を立証するのでしょうか?

故意が何かというのは大変難しい問題ですが、とりあえずは「業務を妨害するつもり」のことだと考えていただければと思います。

まず、考えられるのが自白です。その人物が、取り調べの際に業務を妨害しようとしたことを認める旨の自白などをすれば、故意に関する直接の証拠があるということになります。

ーー警察のリークなので鵜呑みにはできませんが、今回だと「旅館の対応に腹が立った」という供述が報道されていますね。もし本人が否定したら?

故意は内心の問題ですので、それ自体を直接証明することは難しくなる場合が多いです。

そのため、間接的に証明していくことになります。業務を妨害するつもりの者が取るであろう行動をその人物も取っていることや、業務を妨害するつもりでなければ通常取るはずの行動をその人物が取っていないことを立証するわけです。

●捜査機関はどうやって「故意」を立証する?

ーー具体的にはどんなところを見るのでしょう?

たとえば、ユニットバスにタオルを置くことはあっても、通常、布団を置くことはありません。そのため、その人物が布団を置いたこと自体や、布団を置いたことに対してきちんとした理由の説明がないことを立証します。

また、通常、うっかり水をあふれさせた場合、旅館の従業員に連絡して、被害の拡大を食い止めようとするはずですので、そうした行動を取らなかったことも立証していくことになると思われます。

他方、布団をひどく汚してしまったためにユニットバスに置いたとか、洗おうとしたら蛇口の故障で水が止まらず、従業員を呼びに行ったが多量の水をあふれさせてしまったといった事情があれば、故意が否定されることもあります。

ーーなるほど。本人が否認している場合は、弁護側がこういう理由をあげて、故意がなかったことを説明することになるわけですね。ほかに部屋を水浸しにしたことで考えられる刑罰はありますか?

今回のケースでは、布団は使用できなくなっているでしょうから、布団に関する「器物損壊罪」が成立する可能性があります。また、部屋が11日も使用できなくなっていることから、「建造物損壊罪」が成立する可能性があるでしょうね。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

東山 俊
東山 俊(ひがしやま しゅん)弁護士 東山法律事務所
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。

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