2018年05月27日 08時56分

三菱UFJ銀「毎年転勤選択OK」制度、「キャリアに不利」萎縮効果を打ち消せるか

三菱UFJ銀「毎年転勤選択OK」制度、「キャリアに不利」萎縮効果を打ち消せるか
三菱UFJ銀行(東京都内のある支店)

三菱UFJ銀行で働く行員は毎年、全国転勤の「あり」「なし」を選べるようになるーー。こんな人事制度が2019年4月から導入されると日経新聞が報じた。今後、労働組合と協議したうえで導入するという。

報道によると、海外・全国転勤がある職種と、業務内容をしぼり地域限定で働く職種の2つがあるが、来春からは「総合職」として1つに統合する。転勤の有無についての希望は、本人が毎年申告して選べるようにする。賃金体系は同じにして役割や職責で処遇するという。

ライフスタイルの変化に合わせて行員が長く働けるようにする環境整備で、TwitterなどSNSでの反応は概ね良好だ。三菱UFJ銀行は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、労働組合側と交渉しているのは事実だとしたうえで「決定するのは先で、まだ時期も含めて詳細は話せない」(広報担当者)とした。

今回の人事体系の変更をどうみるか。東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に勤務経験がある浦辺英明弁護士に聞いた。

●多様化するライフスタイルに合わせる

ーーご自身も銀行では転勤を経験されましたか

「はい。私自身が銀行に入社した際は(当時の社名は東京三菱銀行でした)、全国及び海外転勤の可能性がある、当時の『総合職』として採用されました。

事実、私の入社当初の初任店は京都支店・支社であり、転居を伴う赴任を命ぜられました。全国赴任の可能性があることは承知していたものの、大学卒業早々に赴任命令を出されたことに驚いたことを覚えています(京都支店・支社時代の銀行員経験は、結果としてかけがえのないものになりましたが)」

ーー今回の人事制度の変更はどのような意味がありそうですか

「今回の人事施策は、職種毎に転勤の有無を定めるのではなく、新たな『総合職』という職種に行員の属性を一本化させ、その上で毎年の行員の希望を聴取するものであると考えられます。多様化するライフスタイルに合わせ、柔軟な転勤施策を打ち出したものとみることができ、この点は良いと思います」

●具体的なキャリアパスの例示なければ、萎縮して使われない恐れ

ーー問題点は何か考えられますか

「まず、自身が毎年転勤の有無について希望を出すことと、それに対して銀行から与えられる役割や職責といった処遇の連関の態様及び程度が明らかにされていないと、行員として自身が転勤無しの希望を出すことに対する萎縮的効果が生じ得るということが考えられます。

つまり、自身が転勤無しの希望を出すことにより、自身の予想を超えて職責が限定されてしまったり、昇進に影響したりするのではないかというおそれを行員に抱かせてしまう可能性があるということです。

そうすると、制度あれども利用されず(行員は保守的に、転勤有の希望を出すことを余儀なくされる)、せっかくの人事体系の変革が画餅に帰することも懸念されます」

ーー確かに、行員が自らの将来を気にするあまり、たいして使えない制度に終わってしまう可能性はありそうですね

「銀行としては、転勤の有無に関する希望が具体的にどのように処遇に反映されるのかについて、相当鮮明な青写真を示すことで、行員のこうした不安を除去する必要があるのではないかと考えます。

転勤有の希望を出し続ける行員と、転勤無の希望を出し続ける行員のほか、ライフスタイルの変化に応じてある年は転勤有の希望、ある年は転勤無の希望を出す行員に対して与える処遇も、グラデーション的に具体的に示されなければ、行員として使いにくい制度になってしまうでしょう」

●みんながいっせいに「転勤無し」を選んだ場合は…

ーー特定の年代の人材がいっせいに「転勤無し」を選ぶなど大きな偏りが出る場合も想定されそうです

「はい。特定の年代や特定のスキルを有する人材の一群がいっせいに転勤無の希望を出してくるような事態に、どう対応するのかという問題点があり得ると考えます。

『適正な人材配置が困難になるような事態にあっては、例外的に、適正な人材配置を行員の希望に優先させることがある』旨の例外措置を制度設計のなかに入れておくことが必要になるかも知れません」

ーー仮に、「転勤無し」で申請していた行員に転勤命令が下った場合、行員としては拒むことはできるのでしょうか

「先程お示ししたような例外措置が就業規則等に規定されていない場合、銀行は『転勤無し』で申請していた行員に対する配転(転勤)命令権を有せず、行員が転勤を拒むことが出来る可能性があります。

一方、例外措置が規定され、かつ例外措置の要件をみたすような場合には、銀行は行員に対する配転命令権を有することになり、行員が転勤を拒むことはできないと考えます。もっとも、銀行の配転命令権も無限定に認められる訳ではありませんので、事情を勘案して、銀行の転勤命令が配転命令権の濫用と認められるような状況では、結論が逆になることがあり得るでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

浦辺 英明(うらべ・ひであき)弁護士
東京大学法学部卒業、中央大学法科大学院修了。東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)勤務経験を有する。企業サイドに特化した人事労務分野を得意分野として活動しており、労働審判、訴訟、労働委員会、団体交渉に関する豊富な経験を有する。厚生労働省就業規則検討委員会委員(平成28年)、新任労働基準監督官後期研修講師。著書に「Q&Aで納得!労働問題解決のために読む本(日本労務研究会編・共著)など。
事務所名:法律事務所ASCOPE
事務所URL:http://ascope.net/

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