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PTAの名簿作りに危機? 改正個人情報保護法の施行で責任の重さがアップ
写真はイメージです(マハロ / PIXTA)

PTAの名簿作りに危機? 改正個人情報保護法の施行で責任の重さがアップ

改正個人情報保護法(2017年5月施行)が施行され、初めて新年度を迎える。改正前の同法は5千人以下の個人情報を扱う事業者は対象外としていたが、改正によりこの条件がなくなり、すべての事業者が対象となった。「事業者」は一般企業にとどまらず、PTAなどの非営利組織も含むとされている。

このため、新入生を迎える新年度に名簿を作る際などに、PTAでは従来より慎重な個人情報の取り扱いが求められることになりそうだ。実際にどのような問題が生じそうか、また保護者が気をつけた方がいいポイントはーー。教育問題に詳しい高島惇弁護士に聞いた。

●PTAが負う法的責任は、より重く

ーーPTAにはどのような対応が求められますか

「PTAについては、非営利の団体も個人情報取扱事業者へ含まれることとなった関係で、たとえ公立の学校であっても、その保護者が任意で組織すれば『個人情報取扱事業者』へ該当することになります。

そのため、ほぼ全てのPTAは、連絡網や同窓会名簿を作成する際において個人情報へ配慮する必要があります。また、改正前に既に名簿を作成している場合でも、個人データが漏えい、滅失又は毀損しないよう安全管理措置を新たに講じなければなりません(法20条)」

ーー対応はかなり違ってくるのでしょうか

「利用目的を明確にして名簿を作成し、その利用目的の範囲内で法に基づく適正な利活用がされれば、法改正によっても問題は生じないと考えます。具体的には、文部科学省が策定した『文部科学省所管事業分野における個人情報保護に関するガイドライン』によると、学校が所定の手続きを取れば、緊急連絡網やクラス名簿を作成・配布して差し支えない旨明記しています」

ーー学校が名簿を作り、保護者の断りなく、PTAに渡している場合もあるようです

「学校とPTAは、どれだけ密接に関連していても第三者であることに変わりないため、保護者の同意なしに個人情報を提供している場合には法23条違反の問題が生じます」

ーー任意で個人情報を提出してもらえば問題はないでしょうか

「内閣府の外局である個人情報保護委員会が公表した『自治体・同窓会向け会員名簿を作るときの注意事項』においても、『会員名簿を作成し、名簿に掲載される会員に対して配布するため』と利用目的を特定し、個人情報を集める際に配布する用紙に利用目的を明記して任意で個人情報を提出してもらえば、本人の同意を得たことになる旨解説しています。

そのため、PTAとしては、住所や電話番号といった個人情報を集める際、その利用目的を書面に明記した上で任意での提出を促すという作業を徹底することで、その後に生じ得る保護者とのトラブルを概ね回避できるでしょう」

●保護者は明示的な書面説明を要請すべき

ーー保護者として、注意した方がいい点はありますか

「保護者としては、個人情報の提出を求められた際は、その情報をどのような目的で使用するのか書面にて明示するよう要請すべきと考えます。

また、先程述べた安全管理措置や、第三者提供にかかる記録の作成・保存義務が明記された関係で(法25条)、PTAに対し、適切に個人情報の取得を記録化して漏えいしないよう管理しているかどうか定期的に確認すると良いかもしれません」

ーー名簿作成をめぐるトラブルはこれまでもありましたか

「はい。PTAは、法的には任意加入団体であると理解されていますが、現実には強制加入に近い形で運営されているケースも多く、名簿の作成についても少なからずトラブルが生じています。今回の法改正によって、PTAが負う法的義務はかなり重くなったため、個人情報の適切な取扱いを実現すべく、専門家のアドバイスを受けるなど十分配慮するのが望ましいでしょう」

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(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

高島 惇
高島 惇(たかしま あつし)弁護士 法律事務所アルシエン
学校案件や児童相談所案件といった、子どもの権利を巡る紛争について全国的に対応しており、メディアや講演などを通じて学校などが抱えている問題点を周知する活動も行っている。近著として、「いじめ事件の弁護士実務―弁護活動で外せないポイントと留意点」(第一法規)。

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