生成AIを活用したミュージックビデオ(MV)が公開されている楽曲「INMU KING」が、異例のヒットを記録している。
オリコンによると、9月25日〜10月1日の週間YouTubeチャートでは、同曲の視聴回数が386万6043回に達し、2位にランクインした。
この楽曲の題材となっているのは、インターネット上で長年知られてきた「ネットミーム」だ。その元になったのは、過去に撮影された映像作品で、MVには、そこに登場した実在人物の顔が使われている。
ネットミームとして多くの人に知られるようになったとしても、本人がその状況を望んでいるとは限らない。
過去の映像に登場した人物の顔が、年月を経て新たな作品に使われ続けることには、慎重な配慮が求められるだろう。
生成AIの普及によって、誰もが手軽に映像や音楽を制作できる時代になった。しかし、技術的にできることと、他人の顔を自由に使ってよいかどうかは別の問題だ。
一度ネット上で広まった人物の顔を使い続けることには、どのような法的問題があるのだろうか。
インターネット上の権利侵害問題にくわしい清水陽平弁護士に、一般論として聞いた。
●ネットミームになった顔、無断で使ってもいい?
──今回のように、実在人物の顔が長年ネットミームとして使われている場合、その顔を使ったMVなどを制作・公開することに法的な問題はないのでしょうか。
本人が利用を承諾していない場合、肖像権侵害の問題が生じえます。
判例上、みだりに自分の容ぼうを撮影されたり、公表されたりしない利益(肖像権)が認められています。そして、撮影や公表が不法行為にあたるかどうかは、社会生活上、受忍すべき限度を超えるか否かで判断するとされています。
また、使われているのが芸能人の肖像である場合、肖像自体に顧客吸引力があるとして、パブリシティ権の問題も生じることになります。
さらに、元の写真などには撮影者らの著作権があるため、無断で使用すれば、著作権侵害の問題も生じるでしょう。
──元の素材の撮影から長い年月が経過していることや、すでにネット上で広く知られていることは、肖像権の判断に影響するのでしょうか。
元の素材が撮影されてから長い年月が経過していることと、生成AIなどで他人の肖像を許諾なく用いることは別の問題です。そのため、肖像権の判断に特段影響を与えないものと考えます。
──元の顔写真をそのまま使うのではなく、生成AIで加工し、新たな映像作品として公開した場合はどうでしょうか。
本人だとわかる顔であれば、法的問題になる可能性は高いといえます。
手描きのイラストであっても肖像権侵害の対象になり得るとされており、写真なのか、AIによって生成・加工されたものなのかという制作手段に、本質的な違いはないといえます。
●本人が削除を求めることはできる?
──仮に本人が、自分の顔を使ったMVを公開してほしくないと考えた場合、動画の削除や損害賠償を求めることはできるのでしょうか。
肖像権侵害が認められれば、人格権に基づく差し止めとして、動画の削除を求めることができます。
また、精神的苦痛に対する慰謝料など、損害賠償を請求することもできます。
──ネットミームを題材にした作品を制作する際、どのような点に注意すべきでしょうか。
「ネットで広く使われているから大丈夫」という感覚は捨てるべきでしょう。
仮に自分の顔が突然使われたらどう思うか。それを前提に対応するのがよいのではないでしょうか。