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後部座席でシートベルトしない人の法的リスク…ヒカキンさん衝突事故から考える
写真はイメージ(Satoshi KOHNO / PIXTA)

後部座席でシートベルトしない人の法的リスク…ヒカキンさん衝突事故から考える

人気ユーチューバーのヒカキンさんが3月10日、Youtubeチャンネル「HikakinTV」で、タクシーに乗車したところ、衝突事故に遭ったことを打ち明けて、話題になった。

ヒカキンさんは朝、仕事の現場に向かうため、タクシーに乗車。片手にスマホ、もう片手にセブンイレブンのホットコーヒーを持って、スマホをいじっていたところ、突然の衝撃があり、「どんな急ブレーキだ」と思ったところ、事故が起きたことを知ったという。

左車線にいた車が、ヒカキンさんの乗っていたタクシーの車線に急に割り込んできて、衝突事故が起きてしまったそうだが、シートベルトをしていたことも影響したのか、コーヒーをぶちまけてしまっただけで、怪我はなかったそうだ。

ヒカキンさんは「みなさん、シートベルトが大事です」と、後部座席であっても、シートベルトをすることの大切さを訴えていた。

自家用車やタクシーの後部座席のシートベルトについては、面倒臭がってしない人もいるが、シートベルトをせずに事故に遭ってしまった場合、損害賠償の金額などに影響する可能性はあるのか。和氣良浩弁護士に聞いた。

●本来請求できた損害額が5~20%減額されてしまうおそれ

まず、刑事上、行政上どのような処分があるのか。

「2008年の道路交通法改正によって、後部座席同乗者がシートベルトを着用していなかった場合、運転者のシートベルト着用義務違反となることが明記されました(同法71条の3第3項)。

同法に違反した場合、刑事上の処分(罰金等)はありませんが、行政上の処分として、高速道路(高速自動車国道又は自動車専用道路)では,基礎点数1点が付されます」

では、民事の損害賠償にはどう影響するのか。

「民事上、後部座席同乗者が交通事故で被害を受けたとして損害賠償請求をする際、後部座席同乗者がシートベルトを着用しておらず、そのことが被害を拡大させたと認められる場合、後部座席同乗者自身の過失であるとして、損害額が減額されてしまう可能性があります。

例えば、最近の裁判例では、追突された車両の後部座席同乗者がシートベルトを着用していなかったため、追突による衝撃でフロントガラスから外に投げ出されて脳挫傷等の大けがを負ったという事案で、後部座席同乗者に10%の過失があると判断されました(横浜地判平成29年5月18日)。

過去の裁判例の傾向からしますと、同乗者がシートベルトを着用しなかった場合の過失割合は、5~20%とされていますので、シートベルトを着用していなかったことで本来請求できた損害額が5~20%減額されてしまうおそれがあります」

現状の着用率はどうなっているのか。

「2008年の法改正から10年以上経過しましたが、後部座席のシートベルト着用率は、未だに高速道路では約7割、一般道では約3割程度にとどまっています(警察庁とJAFが平成30年10月1日から10日までの間に共同で実施したシートベルト着用状況全国調査結果)。

先ほど説明した裁判例のように、後部座席のシートベルトを着用しなかったことで、重大な事故につながってしまうだけでなく、賠償上も不利益を受けることになりかねません。あらためて後部座席を含めたシートベルト着用の重要性を認識する必要があると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

和氣 良浩
和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士 弁護士法人ブライト
平成18年弁護士登録 大阪弁護士会所属 近畿地区を中心に、交通・労災事故などの損害賠償請求事案を被害者側代理人として数多く取り扱う。

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