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ホテルの予約を取り消したい・・・「キャンセル料」が必要なのはどんなとき?
本格的に秋の行楽シーズンがやってきた

ホテルの予約を取り消したい・・・「キャンセル料」が必要なのはどんなとき?

秋の観光シーズン。旅行業界は年末年始も見据え、激しい商戦を繰り広げているようだ。こうした人気シーズンの場合、「宿泊予約はお早めに」と盛んに宣伝されているが、早い時期に予約すればするほど「予定が変わる可能性」は高まる。

「彼女とケンカをした」とか「仕事が入った」など、旅行に行けなくなったとき、真っ先に気になるのが「ホテルのキャンセル料」だ。どうやらその金額や基準はホテルによってもまちまちなようだが、ホテルが定めるキャンセル料を必ず支払わなければならないという法的根拠はあるのだろうか。

ホテルが満室で他の客の申し込みを断っているような状態ならともかく、空き室がたくさんある場合は、ホテル側がキャンセルによって被る損害はほとんどないような気もするが……。キャンセル料発生の根拠と支払いを拒めるケースについて、旅行業界の法律問題にくわしい金子博人弁護士に聞いた。

●ホテルのキャンセルは「宿泊契約の解除」

「ホテルのキャンセル料について相談を受けるのは、旅行業者を通じて申し込んだ場合か、団体旅行のときが、ほとんどです。

個人が直接申し込むときは、キャンセル料について、電話でなら声で告げられ、ネットなら画面に明示されるので、利用者も納得して申し込んでいるのでしょう」

金子弁護士はこのように切り出したうえで、そもそも「キャンセル」とは何か、という話を開始した。

まず、宿泊予約のキャンセルというのは、法的には「宿泊契約の解除」にあたる。そして、キャンセルの成立は「契約の解除に合意した」という性格を持つということだ。

「契約ですから、民法の原則からいうと、ホテルがキャンセルに応じるかどうかは自由なはずですが、この点については『慣習法上、拒絶はしないことになっている』といってよいでしょう」

そうなると、ホテル側が《キャンセル料を払え! さもなくばキャンセルは認めない!》というケースもあり得るのだろうか?

「事前の告知がない場合に、ホテルが『キャンセル料を払わなければキャンセルに応じない』といえるかどうかですが、国内のホテルについては《事前の告知がない場合、キャンセル料の請求はしない》というのが、慣習といってよいでしょう。

ただ、外資系などでは、そういう場合にもキャンセル料を請求するところがあるようです。それが認められるかどうかは『判例で決着をつけるべき』、と言えますが日本人は裁判を好まないので、そうした例はまだないようです」

●予約をキャンセルしないで放置したら?

それでは、「予約をキャンセルしない状態で放置し、実際に宿泊もしなかった」ケースはどうなるのだろうか。これまでの話を踏まえると、宿泊契約を客が一方的に破った状態、となりそうだが……。

「『予約をキャンセルせずに、当日宿泊をしなかった』場合(No Showと言います)は、債務不履行となり、客は宿泊費の全額を損害賠償しなければなりません。

ただし、もしキャンセルされたせいでできた空室が当日客で埋まったなら、損益が相殺され、その分の損害はなかったことになるでしょう。

逆にホテルがガラガラだった場合、そうした形で泊まらなかった客は全額損害賠償をすることとなります」

なるほど、契約違反の責任は生じるが、場合によっては実質的に損害が発生しなかったと判断されるケースもあるようだ。

●相手にしっかり確認することが大事

なお、間に業者を介した場合には、契約の相手や種類が変わるなど、話が異なる点もあるという。金子弁護士は次のように指摘し、注意を呼びかけていた。

「旅行業者を通じたときは、観光庁認可の《手配旅行契約約款》に従うことになります。この約款の内容は、申し込みのとき、目に触れる形になっているはずです。

約款によれば、所定の取消手数料のほか、旅行業者がホテルに支払ったキャンセル料は、支払わなければなりません。ただ、手配契約は、申込書の提出のほか、所定の金額の《申込金を支払うことにより成立する》ので、申込金を支払っていない段階なら、キャンセルは自由です。

団体旅行の場合は、キャンセル料を提示したうえで予約を受け付けているはずですが、これがあいまいなケースが多く、トラブルになりがちです。常に内容を確認しながら、無理のない予約をすべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

金子 博人
金子 博人(かねこ ひろひと)弁護士 金子博人法律事務所
「金子博人法律事務所」代表弁護士。国際旅行法学会の会員として、国内、国外の旅行法、ホテル法、航空法、クルージング法関係の法律実務を広く手がけている。国際旅行法学会IFTTA理事。日本空法学会会員。

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