街を歩いても、自然の中に分けいっても、本格的な秋の色が濃くなってきた。スポーツの秋、芸術の秋といわれるが、やはり食欲の秋だという人も多いのではないだろうか。秋は秋刀魚や鮭、松茸などのキノコ類、カボチャや新米など、たくさんの味覚が並び、梨やぶどう、柿や栗など、さまざまな木々がたわわに実を付ける季節でもある。
住宅地や街中では、柿が色づいているのを見かける。市街地にある銀杏並木で、落ちている銀杏(ぎんなん)を拾っている人も多い。他にも、オリーブや金柑など、実を付ける街路樹が植えられている場所は多数あるようだ。
そんな果物や木の実を見れば、採って食べたくなる人もいるのではないか。だが、隣家の庭に実っている果物を無断で採ったらダメだろう。では、自治体などが管理している街路樹の果物を、勝手に採ることはどうなのだろうか。一藤剛志弁護士に聞いた。
●街路樹から落ちた銀杏は誰のものか?
「まず、その果実を誰が所有しているのか、から考えましょう。
柿や金柑など、木と分離していない果実は、街路樹の構成部分にすぎないので、街路樹の所有者である自治体の所有ということになります。
また、落ちている銀杏などの分離した果実も、民法89条1項が『天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する』と規定していることから、通常、収取権者である自治体が所有者ということになります」
つまり樹上の果実も、路上に落ちた果実も、「自治体の所有物」と言えるようだ。それでは、勝手に持っていけば「盗み」になる?
「木と分離していない果実は、街路樹と一体のものとして自治体の占有が及んでいるので、これを無断で採ることは窃盗罪にあたると考えられます。
また、木と分離した果実の場合も、仮に占有が及んでいないといえても、自治体の所有物であることは変わらないので、占有離脱物横領罪が成立する可能性があります」
●地方自治体が所有権を放棄していればOK?
それでは、公園の樹の下で銀杏を拾っている人は、「犯罪者」ということになる?
「いえ、落ちている銀杏などは、事実上、地方自治体が所有権を放棄しているということでしょうね。占有が及ばず、所有権も侵害されない場合には、特に犯罪は成立しません」
なるほど、自治体が権利を放棄している場合は、権利侵害にならず、犯罪にもならないということだ。そうなると気になるのが、どういう状態なら「勝手に採ることが許されるのか」だが……。
「まず、木と分離していない果実は自治体の占有が及んでいるので、勝手に採ることは許されません。
一方、木と分離した果実で、自治体の収取が行われないことが明らかなものなどは、採ることも許されると思われます。自治体が『採ってもよい』と明示してくれているとより良いですね。
なお、植物の採集については、この他に、各地の条例で定めがあるところもあるので注意が必要です」
そうなると、うっかり「ルール違反」にならないためには、気になる木の実をみつけたら、まず街路樹の管理者に問い合わせてみるのが、無難かもしれない。