TBSの朝の情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」から、「主」の姿が消えた。司会者のみのもんたさんが出演を自粛しているためだ。これは、テレビ局に勤めるみのさんの次男が、窃盗未遂の疑いで逮捕されたのを受けたものである。
みのさんは、逮捕当日の9月11日に「次男が世間をお騒がせしていることについて、父親として申し訳ない気持ちでおります」というコメントを発表。その2日後には、「報道に携わる人間として、その公正を守る意味でも報道番組への出演を自粛させていただくことにしました」と、「朝ズバッ!」の出演自粛を明らかにした。
事件をきっかけに、週刊誌などではみのさんへのバッシングが広がっているが、親が子どもの不祥事の責任をとる形になっていることについて、異論を唱える人もいる。たとえば、歌手の和田アキ子さんはテレビ番組のなかで、「こういう時にいつも親が責任とるの?」と疑問を口にした。
逮捕された次男は31歳で、テレビ局で働く社会人だ。このような20歳をすぎている子どもについても、親の法的責任というのはあるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
●出演自粛は、法的責任によるものではない
「刑事でも民事でも、成年に達した子が犯罪を犯し、他人に損害を与えたからといって、親が親であるというだけで法的責任を問われることはありません」
このように秋山弁護士はズバッと言う。
「親が子どもの犯罪行為をそそのかしたり、手助けしたりした場合には共犯者としての責任を問われることがありますが、それは親でなくても同じです」
つまり、親族ではない他人と、基本的には同じような立場ということだ。では、なぜテレビ出演を自粛しているのか。
「今回、みのもんたさんが情報番組への出演を自粛したのは、法的責任によるものではなく、犯罪報道も取り扱う情報番組の司会者役として、視聴者から求められるイメージにそぐわない事態になってしまったという判断ではないかと思います」
●今回の事件をめぐる報道には疑問がある
こう述べつつ、秋山弁護士は、みのさんの次男の逮捕をめぐる報道について、問題点を指摘する。
「被疑者本人は否認しているようであり、犯人と決め付ける報道には問題があります。
また、黙秘していることや調書への署名を拒否していることが批判的に報じられているようですが、黙秘も調書への署名拒否も被疑者の権利であり、それをもって『反省していない』といった報道には疑問があります。
まして、そうした被疑者の行動をもって、親であるみのもんたさんをバッシングするのは、筋が違うように思います」
「無罪推定の原則」からすれば、逮捕されたからといって、有罪が決まったわけではない。ましてや、今回は被疑者が否認をしている事件だ。有名人の家族ということでマスコミが加熱しているが、本来であれば、もっと慎重に報道すべきなのだろう。