電車で隣に座った男性がスマートフォンで「アダルトビデオ」を見せてきた――。そんな女子高生の体験談がツイッターに投稿されて、話題になった。
彼女が3月上旬、大阪と奈良を結ぶ私鉄の車両に乗っていたところ、隣に座った男性がスマホの画面にアダルトビデオ(AV)を映し、見せつけてきたのだという。女子高生は被害にあった状況を説明したうえで、注意を呼びかけている。
身体を触る「痴漢」が罪に問われることは知られているが、映像を見せるだけの行為も、何らかの罪に問われるのだろうか。刑事事件にくわしい三枝充弁護士に聞いた。
●迷惑防止条例違反にあたる可能性が高い
「私も通勤に電車を利用していますが、逃げ場のない場所でAVを見せつけるなんて、とても悪質ですね」
三枝弁護士はこのように切り出した。では、何らかの罪に問われるのだろうか。
「身体的な接触のある痴漢の場合、各都道府県が定めている『迷惑防止条例違反』か、刑法の『強制わいせつ罪』で処罰されます。
これに対して、今回のケースは直接の身体的な接触がない点に特徴があります。
一般的な迷惑防止条例では、身体的な接触のある痴漢に加え、公共の場所や乗物で『卑わいな言動』をおこなって他人を羞恥させる行為を処罰対象としています。
したがって、AVを見せるケースも、迷惑防止条例違反にあたる可能性が高いと思います」
●「ハイリスク・ノーリターン」の行為
ほかの罪に問われる可能性はないのだろうか。
「AVという『わいせつ』な物を『公然』と見せつけているので、刑法の『わいせつ物陳列罪』にあたる可能性もあります。
ここでいう『わいせつ』とは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいいます。
『公然』とは、不特定または多数の人が認識することができる状態をいいます。電車の中で見せることは、これにあたるでしょう。
スマホに写っていたAVの内容は不明ですが、注意してほしいのは、普通にビデオ店などで流通しているものであっても、『わいせつ』に該当する場合があることです。実際、書店で流通していた成人向け漫画が『わいせつ』に該当すると判断された例があります」
このように述べたうえで、三枝弁護士は次のように警鐘を鳴らしていた。
「いずれにせよ、出来心では済まされない『ハイリスク・ノーリターン』な行為なので絶対にやめましょう」