絞首刑は残虐な刑にあたるとして、死刑囚3人が「刑の執行を受ける義務がないこと」の確認などを求めた訴訟で、大阪地裁(横田典子裁判長)は1月16日、請求の多くを却下した。
判決後、原告側の代理人は「死刑に関する情報を隠蔽する判決だ」と強く反発した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●大阪拘置所の3死刑囚、2022年に提訴
訴えを起こしたのは、大阪拘置所に収容されている死刑確定者の3人だ。
日本では、首にロープをかけた状態で足元の床を開き、数メートル下に落下させる「絞首刑」によって死刑が執行されているとされる。
原告らは、この方法が、残虐で非人道的な刑罰を禁じた国際人権規約(自由権規約)に違反すると主張。
絞首刑を受ける義務がないことの確認や、死刑の執行差し止め、さらに絞首による死刑を宣告されたことによる精神的苦痛について国家賠償を求めて、2022年11月に提訴した。
●日本の死刑囚は「動物以下の扱いだ」
訴状によると、原告らは、絞首刑が一瞬で意識を失うような方法ではなく、死に至るまでに激しい苦痛を伴うと指摘。
そのうえで、多くの文献を引用し、海外では絞首刑が残虐な刑にあたるとして、次々に廃止されている経緯なども紹介した。
また、過去に絞首刑に立ち会った人の証言として、首が引きちぎれたり、途中でロープが切れて失敗したりしたケースがあることにも触れ、絞首刑の残虐性を強調した。
犬や猫などの動物の殺処分でさえ「苦痛を与えない方法」が求められているとして、「日本の死刑確定者は動物以下の存在である」「もはや人間として扱われていない」とも主張した。
大阪地裁(2026年1月16日、大阪市で、弁護士ドットコムニュース撮影)
●大阪地裁「確定判決との矛盾が生じる」と却下
大阪地裁の横田裁判長はこの日、判決文の全文を読み上げることはせず、「理由の骨子」を説明した。
「行政事件訴訟における判断をもって、絞首刑による死刑執行を差し止め、死刑執行を受忍する義務がないことを確認することは絞首という現在の法令による死刑執行を命じた確定した刑事判決との矛盾抵触が生じることになる」と指摘し、原告らの請求が「不適法」なものとして却下。
損害賠償請求についても「理由がない」と退けた。
さらに裁判所は、死刑制度について「現行の法令による死刑の執行方法を含め、憲法31条、36条の規定に違反しないというのが確立した判例」だと指摘。
「死刑制度および死刑の執行方法にかかる合憲性判断の基礎となる事実に変更が生じていない以上、昭和36年12月最高裁判例は変更されるべきものとはいえない」と結論づけた。
なお、「却下」とは、訴訟の要件を満たさないとして、具体的に審理する前に退けるもので、請求の内容を検討したうえで認めない「棄却」と違って、いわば「門前払い」の判断だ。
大阪拘置所(2025年2月、大阪市で、弁護士ドットコムニュース撮影)
●「公に見せられないほど残虐だからだろう」
判決後に記者会見を開いた原告代理人の水谷恭史弁護士は「予想していた中で最悪なパターンがその通り出てきた。意外性のない判決」と批判した。
1948年(昭和23年)3月の最高裁判決が「執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、もちろんこれを残虐な刑罰といわねばならなぬ」と示したことを引き合いにして、「常に違法性、適法性を検証すべきという後世へのメッセージを今回の判決は理解しながら無視した」と語った。
また、金子武嗣弁護士は「死刑や絞首刑に関する情報を隠蔽する判決」「裁判所が法務省の盾になった判決」としたうえで、「法務省がどうして死刑に関する情報を公開しないのかを考えると、それは公に見せられないほど残虐だからだろう」と話した。
大阪地裁に入っていこうとする原告の代理人弁護士たち(2026年1月16日、大阪市で、弁護士ドットコムニュース撮影)
●当日告知の違憲性を問う訴訟など複数の裁判が進行中
大阪では現在、死刑をめぐる裁判が計4件進行している。
再審請求中に死刑が執行されたことによって弁護人だった弁護士が弁護権の侵害などを訴えた裁判、死刑執行を当日に知らされることは違憲だとして死刑囚が提訴した裁判、今回の絞首刑の残虐性を問う裁判、そして死刑執行に関する文書の開示を求めた訴訟だ。
地裁の判決が出たのは、今回で3件目となる。