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「法律の専門家の力で復興を」 東北の自治体で広がる「弁護士職員」採用

「法律の専門家の力で復興を」 東北の自治体で広がる「弁護士職員」採用

東日本大震災で大きな被害に見舞われた東北の自治体で、弁護士資格をもつ人材を「任期付き職員」として採用する動きが広がっている。法律の専門家としての能力や経験を生かし、復興にともなう法的問題の解決や条例・規則の制定・改正などに力を貸してもらおうという狙いだ。

岩手県は2013年1月1日付けの辞令で、弁護士の菊池優太さん(30)を法務学事課の特命課長に任命。3年間の任期付き職員として、復旧・復興事業や東京電力への賠償請求に関する法的課題を中心に助言や指導をしてもらう。全国から応募があったなかで、前年の採用試験を経て、ただ1人採用された。

宮城県も同じタイミングで、弁護士資格をもった任期付き職員を1人採用し、法令を担当する私学文書課に配属した。人事課の担当者は、採用の理由について「震災を受けて法律が複雑にからむような問題も生じてきており、場合によっては裁判の可能性もあるので、弁護士資格をもった職員が必要だと考えた」と話している。

また、福島県の沿岸部に位置し、津波による大きな被害を受けた相馬市は1月15日から、弁護士を対象にして、任期3年の「政策法務担当」職員の募集を始めた(2月15日まで)。同市によると、「沿岸部には津波で浸水した危険区域があり、今後は土地の買収などの問題も起きてくる可能性がある。その際に、法律の専門家としてアドバイスしてもらうことを期待している」という。

同じように、宮城県の仙台市の北側に隣接する富谷町でも1月4日から2月5日まで、弁護士資格をもった任期つき職員の採用募集を行っている。ただ、こちらは相馬市と違い、内陸部にあるため津波の被災地というわけではない。仙台市近郊の富谷町では、企業の移転や住宅の増加にともない人口が増加中で、町から市への移行を目指して準備中なのだという。同町の担当者は「市制移行をにらんで条例制定などが必要になるので、今回の採用も政策法務の面での体制強化を目的としている」と話す。

ここで紹介した4つの自治体はいずれも、任期付き職員として弁護士を採用するのは今回が初めてのことだという。全国的には、2002年に「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」が施行されたことを受け、東京都や厚木市(神奈川県)、明石市(兵庫県)、岡山市などで、法曹資格をもった職員を採用する動きが少しずつ広がっている。その波が東北にまで及んできたといえそうだ。

東北の自治体は、大震災の復興を大きなテーマに掲げているという点で特色がある。現在募集中の相馬市や富谷町の任期付き職員は、弁護士資格をもっていれば全国どこからも応募できるが、「復興に力を尽くしたいという気持ちがあれば、なおいいですね」と相馬市の担当職員は話している。

(弁護士ドットコムニュース)

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