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レジ待ちでイライラ、商品入ったカゴを放置して退店…「待たせる方が悪い」は通用する?
画像はイメージです(xiaosan / PIXTA)

レジ待ちでイライラ、商品入ったカゴを放置して退店…「待たせる方が悪い」は通用する?

店舗で商品をカゴに入れてレジ待ちしていたものの、何らかの理由で購入を諦める際、商品はどうしていますか。

弁護士ドットコムに、「元の棚ではなく、そこらへんの棚に適当に商品を戻しても問題ないですよね?」という相談が寄せられました。相談者は「店外に持って行ったわけではない」とも主張します。

都内に住むヒロアキさん(40代)は、スーパーで商品がたくさん入ったカゴを放置して去った客を見たことがあるそうです。

「レジが長蛇の列だったので、イライラして並ぶのを諦めたんだと思います。でもカゴをそのままにしていくのはひどいですよね」

購入を断念した商品は元の場所に戻すのがベストなのは言うまでもありませんが、カゴに入れたまま放置したり、元の場所に戻さなかった場合、法的問題はあるのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。

●業務妨害罪に問われる可能性も

——商品を元の場所に戻さない場合、法的責任を問われることはありますか。

今回のような問題について法的責任が問えるかどうかは、ケースバイケースであると思われます。

たとえば、生鮮食品など腐りやすい商品が多数カゴに入れられたまま放置され、買い物した人を探すために店舗側が商品を元の位置に戻すのが遅れるなど結果として再度売ることができなくなった場合、商品の価格分の財産的損害が発生します。

こういった場合は、買い物カゴを放置していった人に対して、損害賠償請求(民法709条)をすることができるのではないでしょうか。

また、多数の商品を入れたカゴを放置するようなケースでは、店舗側の業務を妨害する危険が生じていると考えることもできますので、業務妨害罪(刑法233条、234条)に問われる可能性もあると思われます。

——実際に責任が問われる可能性はどの程度あるのでしょうか。

店舗側が責任を追及しようとしたら、商品を戻さなかった客を特定するために、防犯ビデオを解析して調査し、住所を突き止めて請求書を送ったり、警察に被害届を出したりするなどの手間が発生します。

弁護士等の専門家に依頼することになれば、生じた損害以上の費用が発生することもあり得るでしょう。

現実問題として、1回の行為で損害賠償責任を追及されたり、刑事責任を問われたりするようなことは考えにくいですが、回を重ねて常習的に行えばリスクは高まると思われます。

軽い気持ちでするマナー違反も度を超えれば法的責任を問われうるということです。客側にも店舗を利用する際の道義的責任があることは、よくよく理解しておく必要があります。

プロフィール

寺林 智栄
寺林 智栄(てらばやし ともえ)弁護士 NTS総合弁護士法人札幌事務所
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。

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