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池袋事故の遺族中傷で有罪、松永さん「それでも中傷しますか」 賠償請求にも踏み切る
会見する松永拓也さん(2023年1月13日、弁護士ドットコム撮影)

池袋事故の遺族中傷で有罪、松永さん「それでも中傷しますか」 賠償請求にも踏み切る

2019年4月の池袋・暴走事故で妻娘を亡くした松永拓也さんを中傷したとして侮辱罪などに問われていた被告人の男性(23歳)に対し、東京地裁(安永健次裁判官)は1月13日、拘留29日と懲役1年執行猶予5年(求刑拘留29日と懲役1年)の有罪判決を言い渡した。

松永さんは東京都内で会見し「彼が二度と人を傷つけ、貶めることのないよう注視していく」と話し、損害賠償を求めて民事責任を問うていくことを明らかにした。

中傷ツイートは妻の真菜さん、娘の莉子ちゃんの名前を挙げ「お荷物の子どもがいなくなって新しい女とやり直せばいい」などの趣旨が書き込まれていた。松永さんは「名前も顔も知らない人から中傷され、驚き、悲しかった。何よりも2人を物みたいに言われたのは我慢できなかった」と振り返った。

●この痛みを誰にも経験させたくない

関東交通犯罪遺族の会「あいの会」副代表も務める松永さん。事故を1件でもなくしたいと活動するためにツイッターアカウントで情報を発信してきた。あいの会や松永さんの元には、他にもツイッター上で中傷やアカウントを変えて付きまとう人が今もいるという。

小澤樹里代表は「世に出て実名で発信するのは、二度と事故がないようにと願っているからです。そうした遺族に『金儲けか』などと心ない言葉をかける目に見えない加害者は他にもいます」と明かし、法的手続きも検討しているとした。

松永さんは「本当はもう誰とも争いたくないんです。刑事・民事の責任のリスクまで背負って、中傷しますか?と問いたいです。この心の痛み、苦しみを他の誰にも経験してほしくない」といい、誹謗中傷のない社会をつくれるように活動していくと話した。

被告人に対する民事訴訟については、賠償が認められたとしても費用などを考えたら赤字になる場合が多いものの「刑事だけでなく民事上の責任も負うんだということを社会に伝えたい」との思いで踏み切るという。

●厳罰化された改正刑法は適用されず

報道によると、被告人は侮辱罪のほか、2022年8月に秋葉原で無差別殺傷事件を起こすことを示唆する投稿をしたとして偽計業務妨害罪で在宅起訴された。弁護側は「投稿は松永さんに対するものではない」などとして侮辱罪は成立しないと主張していたが、地裁は「甚だ不自然で、弁解は信用できない」と退けた。

侮辱罪をめぐっては、2022年7月に改正刑法が施行され、厳罰化された。これまでの法定刑「拘留(30日未満)か科料(1万円未満)」に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を追加した。公訴時効も1年から3年に延びた。

今回の事件は6月の起訴だったため、改正前の法定刑が適用された。松永さんは「この程度で済むと思う人もいるかもしれないが、今は懲役や罰金もあると知ってほしい。罰があるからやめておこうというのは悲しいことだが、抑止効果にはなる」と話した。

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