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1人で暮らす「84歳の母」が認知症に…誰が自宅を処分できるのか?
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

1人で暮らす「84歳の母」が認知症に…誰が自宅を処分できるのか?

認知症の親の自宅を処分するために、どんな手続きが必要なのか? 弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある女性が相談を寄せました。

相談者の84歳の母親は最近、認知症の診断を受けたそうです。母親は東京都内で1人暮らしをしており、相談者が様子を見に行くと、今まできれいだった家の中が少し汚れていたり、鍋を焦がした様子があるなど、認知症が進んでいる兆候があるといいます。

相談者は母親を心配し、近い将来、自分の家の近所に賃貸を借りるか、高齢者向けの施設に入所してもらうことを考えています。そのための費用を捻出するために、母親の自宅を売却するか、賃貸で貸し出すことを検討しているそうです。

認知症の親の自宅を売却したり、貸し出すために、どんな手続きが必要なのでしょうか?親の承諾を得ずに、子どもが勝手に処分してもいいのでしょうか?小松雅彦弁護士の解説をお届けします。

●子どもが勝手に売却することはNG

親御さんが所有権を有する自宅の土地建物を、子どもが勝手に売却したり、賃貸したりすることはできません。あくまで処分するかどうかの判断をするのは親御さんです。

親御さんが認知症などで判断力がない、あるいは不十分な場合は、「成年後見制度」の利用を検討する必要があります。成年後見制度は、判断力が低下した人の財産を守り、生活をサポートするための制度です。親御さんの判断力の程度によって、家庭裁判所に成年後見人、保佐人、補助人を選任してもらうことができます。

後見人等には親族が選任される場合もありますが、弁護士や司法書士・社会福祉士などの専門家が選ばれることもあります。成年後見人等は、本人の利益を常に考えながら、本人を代理して法律行為を行うことなどができます(ただし保佐・補助は、本人の同意を得て家庭裁判所が付与した代理権の範囲で)。

●「成年後見人」でも売却には家裁の許可が必要

成年後見人、保佐人、補助人がその代理権に基づき親御さんの不動産を処分しようとする場合、実家の不動産は「居住用不動産」ですので、家庭裁判所の許可が必要だと法律で定められています。許可を得ずに処分した場合、その処分は無効になりますので注意しましょう。

もちろん認知症といっても程度問題ですから、判断力があるといえる場合は、親御さんが有効に処分をすることができます。

しかし、親御さんに判断力があるかないか、後に親族間で争いになることもありえますし、家を処分する際の決済時に問題が起き、売買ができない可能性も考えられます。あらかじめ専門医に親御さんを診察をしてもらい、親御さんが成年後見人等をつける必要があるか意見を聞くことが必要でしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

小松 雅彦
小松 雅彦(こまつ まさひこ)弁護士 多摩オアシス法律事務所
後見・相続・遺言を多数取り扱う。「気軽に相談できる、親しみやすい法律家」をモットーに身の回りの相談にも対応している。薬害エイズ事件やハンセン病国賠事件、薬害肝炎事件なども担当した。

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