「上階の住人が夜中に大笑いします。解決法はありませんか」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられています。
相談者によると、夜中の0時から3時ごろ、アパートの上階に住む2人暮らしの住人が大声で笑うそうです。「子どもなら分かりますが、いい大人です。お酒でも飲んでいるのだと思います」と相談者は怒りをおさえきれない様子です。
このようなトラブルがあった場合、どのように対処すべきなのでしょうか。山之内桂弁護士に聞きました。
●「共同の利益に反する行為」にあたる可能性も
ーー上階の住人が夜中に大笑いすることは、法的にどのような問題があるのでしょうか。
「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)6条1項に定める『共同の利益に反する行為』にあたる可能性があります。裁判例上、騒音・臭気・振動などの近隣迷惑を含むと解されています」
ーー具体的に、どのような音が「騒音」にあたるのでしょうか。
「環境騒音は、普通騒音計による計測数値で評価します。したがって、一般的な騒音の基準値・規制値・受忍限度を超えれば、音源が子ども、大人、動物、機械のいずれであっても、同じ騒音として評価されます」
●頼みの綱は管理会社ではない?
ーー相談者のように騒音に悩んでいる場合、どのような対処法をとるべきでしょうか。
「まずは直接、手紙なり訪問なりで、上階の住人に騒音防止を頼んでみましょう。それで改善されなければ、受忍限度を超えるものとして、裁判所に『騒音差止の仮処分』を求めることも考えられます。騒音の時間帯・程度内容からして、認められる可能性があります」
ーー相談者によると、これまで管理会社から上階の住人に注意してもらったことがあるようです。しかし、まったく効果はみられず、相談者は途方に暮れています。
「頼みの綱は管理会社ではありません。管理会社は、管理委託契約に定められていることだけをすればよいからです。
マンション標準管理委託契約書11条2項では、共同利益違反行為の中止を求めても、相手が中止しないときは、管理会社は責任を免れ、その後は管理組合がすべきことになると規定しています。
お住まいのマンションの管理委託契約書の内容を確認してみてください。居住者間トラブルの解決は、管理業務に含まれていないのが通常です」
●管理組合・理事長に対応をしてもらうという方法も
ーー管理組合や理事長に対応をお願いするという方法もあるのでしょうか。
「はい。個人として対応する方法のほかに、区分所有法(法57条以下)に従って、管理組合に『仮処分』等の対応をしてもらう方法があります。
区分所有建物の管理・使用に関するルールは、管理組合が決め、管理者(多くの場合、管理規約で理事長と定められています)が運用します。分譲マンションは管理組合という立法機関、管理者(理事長)という行政機関を備えた小さな村といえます。
集会決議が必要になるなど、ハードルは高いですが、最終的には、使用禁止・競売申立まで可能です。相手方が賃借人である場合にもほぼ同様の手段・方法で対処することになります」