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「がんの妻と日本で暮らしたい」パキスタン男性が「在留特別許可」をもとめて提訴
リュウさん(左)とサディクさん(2019年8月19日/弁護士ドットコム撮影/東京都)

「がんの妻と日本で暮らしたい」パキスタン男性が「在留特別許可」をもとめて提訴

強制送還が予定されているパキスタン人男性、モハメド・サディクさん(神奈川県厚木市・55歳)が8月19日、国を相手取り、「在留特別許可」などをもとめる訴訟を東京地裁に起こした。提訴後、サディクさんは東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて、「(がんの)妻と一緒に日本で暮らしたい」とうったえた。

●永住者の妻は「がん」を患った

訴状などによると、サディクさんは学生時代、母国のパキスタンで、反政府デモに参加するなどしていた。命の危険を感じて、約30年前の1988年、観光ビザで来日した。ビザが切れたあとは、在留資格がないまま、自動車部品会社や建設会社などで働いていた。

月日が流れて、サディクさんは2006年2月ごろ、永住権をもつ中国人女性、リュウ・ウェンジェさん(59歳)と出会って、交際をはじめた。結婚に向けて準備をすすめていたところ、2007年7月、出入国管理法違反(不法在留)で逮捕されて、入管施設に収容された。

2人は2007年9月、婚姻届を提出して、夫婦になった。サディクさんが2009年に仮放免となって、リュウさんが生活を支えた。ところが、2014年、リュウさんに乳がんが見つかった。摘出手術を受けて、抗がん剤による治療も終えたが、リュウさんは現在、リンパ浮腫や肺炎を発症して、がんの再発リスクもかかえている。

●人道的配慮が必要な事情が複数ある

この間、サディクさんは、名古屋入国管理局(当時)で不法在留と認定されたことから、法務大臣に異議申し立てと在留特別許可の申請をおこなっていたが、名古屋入国管理局長は2007年11月、「原告の異議は理由がない」という裁決を下して、退去強制令書が発付された。サディクさんはその後も6度にわたって「再審情願」を申し立てている。

サディクさんは2010年4月、再収容されたが、そのあとの仮放免からすでに9年以上も経っている。ところが今年に入って、「送還予定時期通知」(7月1日付)が送られてきた。そこには、送還予定時期として、「8月第5週ころ」と記載されていたことから、今回の提訴に踏み切った。

サディクさんは(1)在留期間が長いこと、(2)婚姻期間が長いこと、(3)帰国すると命の危険にさらされるおそれがあること、(4)リュウさんの症状はいつ悪化してもおかしくなく、同居していなければ、緊急の事態に対処できないこと――など人道的な配慮が必要とする事情が複数あると主張している。

●「妻の命を守るために」

サディクさんはこの日の会見で「裁判は大変だけど、妻の命を守るためにがんばるしかない」「パキスタンに戻ったら、命は危ない。残りの人生は、家族と一緒に日本に住みたい」とうったえた。同席したリュウさんも涙ながらに「一緒に暮らしたい」と話した。

法務省の在留特別許可のガイドラインによると、永住者と婚姻関係があって、夫婦として相当期間の共同生活を送っていて、相互に協力して扶助し、婚姻が安定かつ成熟している場合は、積極的要素として考慮されることになっている。

サディクさんの代理人をつとめる指宿昭一弁護士は「なぜ、この夫婦に特別在留許可が出なかったのか。入管が出さないなら、裁判所が今からでも、在留特別許可を出すべきだという判断をしてほしい」と話していた。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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