4月は新生活が始まるのに合わせて、家を借り始める人も多い時期です。賃貸物件の契約更新を控えている人も多いのではないでしょうか。そんな中、「契約更新直前に家賃の値上げを言い渡された」という相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者のもとに届いた更新通知には、契約更新の際の更新料振り込みの案内とともに、「値上げラッシュにより諸経費が上がり、家賃を3千円値上げする」と書かれていました。
いきなり値上げを告げられた相談者は、「もっと早く値上げの話をするべきではないでしょうか」と戸惑っています。相談者は値上げを拒否して、契約更新することができるのでしょうか。白土文也弁護士に聞きました。
●根拠のない値上げが認められるわけではない
——どんな場合も値上げは認められるのでしょうか?
まず、建物賃貸借契約には借地借家法が適用されますので、賃貸人が賃料を増額すると請求すること自体は適法です(借地借家法32条1項)。
ただ、賃料の増額が認められるためには、一定の要件を満たす必要があります。根拠のない値上げが認められるわけではありません。
条文では、土地や建物の租税などの負担が増加したこと、もしくは、土地や建物の価格が上昇したことなどにより今の賃料が不相当になったこと、または、近隣の同じような建物の賃料と比べて今の賃料が不相当になったことが要件とされています。
●値上げに納得が出来なければ応じる必要はない
——では、増額請求された側の賃借人はどうすれば良いのですか?
値上げに納得が出来なければ応じる必要はなく、これまでの賃料を支払い続けることで問題ありません。
賃貸人と賃借人の間の協議で解決できない場合は、調停・訴訟で解決する必要があります。増額請求されただけで賃料の増額が認められることはありません。
ただし、裁判で増額が認められた場合、増額請求された時点以降の賃料の不足分とそれに対する年10%の利息を支払う必要があるという点は注意しましょう。
——「値上げに応じなければ賃貸借契約を更新しない」といった通知があった場合、家を追い出されてしまうのでしょうか。
この場合でも、賃貸人が契約の更新を拒絶するのに必要な「正当事由」が認められない限り、賃貸借契約は以前と同一の条件で更新されることになります(借地借家法26条1項、28条)。
具体的には、賃貸人が建物の使用を必要とする事情や立退料の提示などが「正当事由」として認められることになります。そのような事情がなく、単に値上げに応じないという理由だけでは、更新拒絶は認められないと考えてよいでしょう。