どうしてもトイレがみつからないとき、周囲をうかがいつつ、こっそり用を足した経験が、男性なら一度はあるのではないだろうか。いわゆる「立ちション」。記者自身も、小さいころ、両親に「おしっこがしたい」と伝えると、「その辺でしてきなさい」と言われ、草むらに走って用を足した思い出がある。
しかし、インターネットのQ&Aサイトでは、「自宅の前で立ちションをする人を取り締まりたい」といった声もあった。外で立ちションをしていると、「犯罪」として取り締まられることもあるのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。
●「立ちション禁止」は法律にも書いてあった!
「立ち小便行為は、軽犯罪法で禁止されています」
足立弁護士はこう明言する。
「具体的には、『街路または公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、または大小便をし、もしくはこれをさせた者』は、拘留または科料にすると、規定されています(1条26号)。
『拘留』というのは、1日以上30日未満の間、施設に収容される刑罰で、懲役と違って作業は科されません。『科料』は、1000円以上1万円未満のペナルティを支払わされることです」
これらは刑罰の中でもっとも軽いものだが、立ちションをすると、逮捕される可能性もあるというわけだ。
「ただ、軽犯罪法が適用されるのは、あくまで『街路または公園その他公衆の集合する場所』での立ち小便です。
したがって公衆が集まる場所でない所、たとえば自分の家の敷地や山奥、海や川の中などは適用外になります」
つまり、どうしても我慢できないなら、人目に付かない場所で、ということのようだ。
●他の犯罪になるおそれも・・・
「だからといって、『自分の家の敷地でしてもいいのなら、他人の家の敷地でもOKだろう』とは考えないでください。
立ち小便をする目的で、他人の家の敷地に侵入すると、住居侵入罪(刑法130条前段)になってしまいます。実際に立ち小便をしなくても、その目的で侵入した時点で犯罪です。
住居侵入罪の法定刑は、軽犯罪法に比べると重くなっています」
住居侵入罪は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」で、たしかに、軽犯罪法違反よりもだいぶ重い。むしろ、こちらに注意すべきかもしれない。
過去には、立ち小便をしているところを目撃され、「公然わいせつ罪」として逮捕されたというニュースも報じられている。軽い気持ちの立ちションで、警察のお世話になるなんてまっぴらだ。万が一しかたなく外で用を足すときには、そこがどんな場所なのか、周囲に誰もいないかなど、しっかりと確認したほうがよさそうだ。