弁護士ドットコムは、会員の弁護士に「警察の対応への不満」についてのアンケート(実施期間:2022年12月21日〜2023年1月9日)を実施し、105人から回答が寄せられた。結果を4回に分けて詳報する。
2回目のテーマは「取り調べ」。取り調べについて疑問や不満を抱いたことはあるかとの問いには、64.7%の弁護士が「とてもある」「ややある」と答えた。
●取り調べは反省の場と考える捜査官
高圧的な取り調べは今もなくなっていないようだ。弁護士の体験談を紹介する。
「相変わらず大声で怒鳴る、被疑者をお前呼ばわりするなど、威圧的な取調べを行っている」
「取り調べを反省させる場と捉えている捜査官がいる」
「被疑者が捜査官から、自分(編注:回答した弁護人)なら生きてられないという暴言を吐かれた」
「暴行はさすがに見かけないが、一般社会では許容されないレベルの脅迫はいまだに見られる。検察庁及び県警本部長へのクレームは数年に一度、自身も経験する」
●ストーリーに無理やり当てはめ
供述調書の内容についても疑問が多く寄せられた。
「本人の言う通りに書かず、犯罪事実に無理矢理あてはまるようもってゆく」
「供述調書が既に用意されていた」
「一生懸命に被疑者の不利になる供述を作文しようとしているので、無駄な努力をしていると思います。ほとんどの個所を一部否認をして、虫食いの作文に作り替えています」
「ケースとして多いとまでは思いませんが、被疑者本人が話した言葉を、取調べ担当者が話させたい内容に変換しすぎるケースに遭遇することはあります」
「調書への署名押印拒否に対する反発、嫌がらせ的発言がある」
「嘘をつく、罪証隠滅をする警察官が多すぎる」
●「弁護士は責任取らないぞ」信頼関係を揺さぶるのは常
また、自白を迫るため長時間の取り調べをしたり、ウソをついたりするケースも珍しくないようだ。弁護人との信頼関係を揺さぶるのも常套手段と言えるだろう。
「長時間、深夜に及ぶ取り調べが行われたため、準抗告を申し出た。かつ自白も強要されていた」
「被疑者に対し、『黙秘すると勾留がのびる』『話せばすぐ出られる』と言うのは常習。弁護人の言うことを聞いても意味がないと思わせようとする発言もよく聞かれる」
「『弁護人の言うことを聞いても弁護人は責任を取ってくれんぞ』などと弁護人との信頼関係を壊すようなことを被疑者に言う」
●録画の外で被疑者を恫喝
刑事訴訟法の改正により、2019年6月に録音・録画(可視化)制度が施行されたが、対象となるのは、裁判員裁判になる事件、検察庁が自ら検挙・摘発しておこなう捜査の事件に限定されている。逮捕されていない場合は対象外だ。
「立会いを許さないし、可視化対象外事件は断固として録音録画しない」
「録録を求めても応じない。録録に応じない。応じた場合もカメラに映る前後(移動中などに)被疑者を恫喝する」
「可視化措置が励行されているか検証方法が十分でなく、特に、否認した取調べ際には否認調書を作成しない場合が多いため、可視化措置が励行されたかどうか容易に判断出来ない」
●弁護人との打ち合わせに聞き耳、同性愛者への問題発言
このほか、次のような行為の報告もあった。
「在宅事件の任意取調べに同行した弁護人との打合せ(警察署の建物外)に捜査官が付いて来て内容に聞き耳を立てようとしてきた」
「LGBT当事者である男性被疑者に対して、別の警察官を指さして『ああいうのは好みなの?』とか、『自称イケメンが来たぞ』といった発言をした」
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