2020年2月にあったコインハイブ事件の控訴審判決で、東京高裁が男性を無罪とした一審・横浜地裁判決を破棄し罰金10万円の逆転有罪としたことを受け、弁護団がITエンジニアらに募集していた意見書は、締め切りの3月31日までに47通が集まった。
意見書は、一般社団法人「日本ハッカー協会」(東京都千代田区)を通じて集めたもので、弁護団が上告趣意書とともに6月15日までに最高裁に提出する予定。
弁護人の平野敬弁護士は「短期間にもかかわらず、多くの方々のご協力をいただけたことに深く感謝しております。社会的関心の大きさを改めて認識するとともに、最高裁に臨む自らの職責の重さを感じています」と話した。
●懸念する声、多数寄せられる
平野弁護士によると、意見書は、企業や官公庁勤務、会社経営者、フリーランスなど、様々な立場のエンジニアから寄せられた。この他、刑法学者や憲法学者、情報法学者ら研究者からの意見書も合わせて提出する。
意見書では、エンジニアから「多くのインターネット広告と本質的には同じものです。仮想通貨(暗号資産)が与える一部の悪いイメージと混同されるべきではない」、「曖昧な基準による処罰が横行してしまうと、当社も新技術の開発に消極的にならざるを得ず、たいへんな萎縮効果がある」、「もはやIT技術者に限らず一般の方が普段生活のために利用しているほとんどすべてのアプリケーションに影響がある」など有罪判決に懸念する声が多数寄せられた。
●「複雑困難事件10選」に選ばれる
コインハイブ事件は、意外なところでも言及された。
検察官の定年延長を可能にする「検察庁法改正案」をめぐる衆議院内閣委員会の質疑の中で、森雅子法相は5月15日、定年延長が必要な理由の説明として、法務省が選ぶ「複雑困難事件10選」を挙げた。その一つに、コインハイブ事件があったのだ。
平野弁護士は「本件は森法相によって複雑困難な事例の代表例として国会で名を挙げられるなど、検察側においても深い関心があることがうかがわれます。後世に恥じる先例を残すことのないよう、全力を尽くします。お預かりした意見書は確実に最高裁にお届けいたします」と話した。