「生きるためには、それしか方法がなかった」。大麻取締法違反(所持)の罪に問われている末期がん患者、山本正光被告人(58)の第5回公判が7月12日、東京地裁であった。山本さんは被告人質問で、がん治療の目的で大麻を栽培・使用した正当性を主張した。
山本さんは2014年、末期がんで「余命6カ月」の宣告を受けた。2015年3月から、それまで効果のなかった抗がん剤治療などにかわって、自宅で栽培した大麻を使用しはじめた。すると、差しこむようながんの痛みが消えて、食欲や睡眠がとれるようになり、腫瘍マーカーなどの数値も改善されたという。
だが、山本さんは2015年12月、東京の路上で職務質問され、大麻所持の疑いで逮捕された。現在は、医療用の麻薬系鎮痛剤を使った緩和ケアをおこなっているが、「副作用や痛みがつらい」「体調の良いときと悪いといきの波がある」(山本さん)という。腹水がたまるなど、入退院をくりかえす生活を過ごしている。
●車いす姿で出廷「次は法廷に立てないかもしれない」
この日の公判に、山本さんは車いす姿で出廷した。裁判官に名前を呼ばれると、よろよろと立ち上がり、重たい足取りで法廷中央の証言台に移動。弁護人と検察官から、大麻を栽培・使用に至った経緯についての質問を受け、しっかりとした口調で答えた。
弁護人が「裁判官に聞いてもらいたいことはあるか」とたずねると、山本さんは「事実に目をそむけるときじゃない。苦しんでいる患者がいる。大麻を(治療に)使えるようにしてほしい」「助けてくれますか」とうったえた。
弁護側は、患者には最良の治療方法を求める権利があるとして、「大麻取締法は違憲だ」として、山本さんの無罪を主張している。公判後の報告集会で、山本さんは「もしかしたら次は法廷に立てないかもしれないが、くたばらないようにがんばります」と述べた。次回の公判(8月2日)では、検察側の論告求刑と被告人側の最終弁論がおこなわれる予定だ。