依頼者の利益を最大限尊重しつつ、相手方にとっても最良の結果を探る
法律に詳しくないために不利益を受けている人々を救済したい
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
中学生の頃に5歳年上の兄から話を聞き、弁護士という職業を知りました。世の中には法律に詳しくないために不利益を受けている人や社会的に弱い立場の人たちがいるーー。そんな人達を、弁護士になって助けたいと思い、弁護士を目指すようになりました。
当時はロースクールがない時代でしたので、法学部に進学してからも弁護士になれるかどうかという不安がありました。そのため、大学在学中に宅地建物取引士、行政書士、司法書士の三つの資格を取り、その後に司法試験の勉強を始めました。
弁護士になれなかった時のために取った資格でしたが、結果的にはどの資格も弁護士の活動に非常に役立っています。
ーー注力されている分野を教えてください。
遺産相続、交通事故、不動産・建築に注力しています。
遺産相続に注力している理由は、遺言状の作成や遺産分割協議に弁護士として積極的に携わることで、相続争いが深刻化するのを防ぎたいと考えているからです。
交通事故は「交通事故紛争処理センター」の嘱託弁護士として、被害者側からの依頼を受けています。交通事故の被害に遭った時に、法律に詳しくないがゆえに正当な損害賠償を得ることなく示談してしまうケースが多々あります。そうしたことが起こらないための活動をしています。
不動産・建築は、学生時代に取得した宅地建物取引士、行政書士、司法書士の資格が存分に活かせる分野です。特に建築紛争は専門知識を必要とすることから取り扱っている弁護士が少なく、「どこに相談したらいいのか困っている」という声をよく聞くので、率先して取り組むようになりました。
ーー仕事をするうえで心がけていることは何ですか?
大きく分けて二つあります。一つ目は、依頼者の話を最後まで聞くということです。長年弁護士を続けていますので、話を少し聞けば争点や解決策は見えてきます。ですが話をそこで切り上げてしまっては、依頼者にとっては「話を聞いてくれない」のと同じことです。
自分の思いや悩みを聞いて欲しいと感じている方もいますので、依頼者に満足してもらえるよう、時間の許す限り話を聞くことを心がけています。
二つ目は、依頼者の利益を最大限尊重しつつ、相手方にとっても最良の解決方法を探るということです。依頼者の利益だけを追求した結果、相手方の合意を得られず解決が遠のいてしまったり、反感を買って新たなトラブルを招いてしまうということも起こりかねません。
そうした事態を防ぐためにも、相手方の立場や主張も考慮し、できる限り両者にとってベストに近い解決ができるよう心がけています。
ーーこれまで活動してきた中で印象的だった案件はありますか?
29年の弁護士人生で忘れられない事件が二つあります。
一つは25年ほど前、いじめを苦に自殺した中学生の母親から依頼を受け、学校側を相手に訴訟を起こした事件です。同級生からの証言も取れて立証できたつもりでいたのですが、判決は請求棄却でした。
当時からいじめは社会問題になっていたものの、いまほど世間の注目度は高くなく、事件がニュースで大きく扱われることはありませんでした。
母親の苦しい思いを晴らすことができず、私にとっても苦い経験になりましたが、その時の悔しさをバネに弁護士を続けてきました。
もう一つの忘れられない事件は数年前に担当した交通死亡事故です。働き盛りの男性が事故で亡くなり、奥さんと幼いお子さんだけが残されました。この事故に対し、加害者側の保険会社が提示した賠償金は3000万円でした。
人の命に値段をつけることはできないとはいえ、事故がなければ得られていたであろう収入を考えたら、3000万円は低すぎます。相手方と交渉をしてもまったく妥協をすることがなかったため訴訟を起こして、最終的に1億円を超える金額で和解を成立させることができました。
もちろん、賠償金がいくらになろうが大切な人を亡くした遺族の気持ちが晴れることはありません。ですが、誠意は伝わります。保険会社がはじめに提示した賠償金や対応には遺族への誠意が感じられませんでした。
最終決定の賠償金の中には、本来は相続人にならない被害者の両親への慰謝料も含まれており、その結果に遺族も納得を示してくれました。
二つの事件は結果こそ違うものの、遺族の思いを背負った事件として、記憶に残っています。
ネットの情報に振り回されず、まずは弁護士のアドバイスを
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
城めぐりが趣味で、「100名城スタンプラリー」に挑戦しています。城の立地や構造から、当時の情景や、城での攻防戦などを想像するのが非常に楽しいです。
それから2年ほど前からトイプードルを飼いはじめ、休日に散歩したりドライブに行ったりしています。旅行をするときはペットが一緒に泊まれるホテルを選ぶようにして、家族の一員として大切な存在になっています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
30年近く弁護士を続けてきて、その間には埼玉弁護士会の会長や日本弁護士連合会常務理事として、弁護士会の活動にも注力してきました。
弁護士会の活動は私なりにやるべきことはすべてやれたと思っているので、これからは一弁護士として、経験や知識を活かして引き続き法律トラブルの解決に努めていきたいと思っています。また、注力分野を中心にできるだけ長く弁護士を続けていきたいですね。
ーー法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
情報化社会の中で、ネットで調べれば法律トラブルを解決できるだろうと考えている方が多いと思います。しかし、ネットに出ている情報が必ずしも解決に繋がるとは限りません。
信頼性のない情報に振り回されることのないよう、まずは根本的な原因や解決するには何が必要なのかといったアドバイスを、弁護士から受けてもらいたいと思います。