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ロッキー山脈、2億円相当「宝探し」に35万人が挑戦…日本人が見つけたら税金は?
フェンさんとみられる人物のインスタグラムより

ロッキー山脈、2億円相当「宝探し」に35万人が挑戦…日本人が見つけたら税金は?

アメリカ・ロッキー山脈のどこかに2億円相当の財宝が埋められているとCNBCやVOXなどが報じている。これを目当てに、約35万人がロッキー山脈を訪れたが、未だに財宝は見つかっていないという。

この財宝を埋めたのは、骨董商を営む男性、フォレスト・フェンさん(87歳)だ。フェンさんは1988年にガンと診断され、宝石などの宝物を整理したものの、ガンを克服。2010年に、「人々に希望を与えたい」と財宝を山中に埋めて、ヒントを発信している。

今後、宝探しのためにロッキー山脈を訪れる日本人がいるかもしれない。もし、財宝を見つけた場合、税金を納める必要はあるか。柴田篤税理士に聞いた。

●日本に居住していれば、日本で所得税が課税されるのが基本

日本に居住する日本人をAさんとしましょう。Aさんが日本の宝くじを当てた場合は、

当せん金付証票法で非課税です。日本の宝くじが当たるというのは、すべてが可処分所得になりますので、倍近くの金銭を手にするのと同じなんですね。

一方、Aさんがアメリカの宝くじを当てた場合は、当選金は、日本で一時所得として課税されます。同時に一定額以上の場合、アメリカ側でも連邦税・州税が課税されますので、額面以下の手取りになります。

今回は、宝くじでなく、フェンさんが埋めた財宝が対象です。順番に考えて行きましょう。日本人はどこで稼ごうとも、日本に居住している以上、稼いだ全世界の所得に課税されます。これをレジデンス・ルールといいます。Aさんは、フェンさんの財宝を時価で得たものとして、日本で一時所得として課税されます(所得累進課税)。ではAさんは、アメリカでは課税されないのでしょうか。

●作業場や工事現場などのPEがアメリカにあれば、アメリカで課税

ここから国際税務の世界に移ります。以下では、租税条約の届出をし、租税条約の恩典が適用されることを前提に考えていきます。日本とアメリカは租税条約を締結しています。日米租税条約の第13条で、不動産が絡まない財産の譲渡については、譲渡者が居住する地でのみ課税されるとありますから、フェンさんの居住しているアメリカでも源泉所得として、課税されることになります。

また、「PEなければ課税なし」、逆に言えば「PEがあれば課税しますよ」という規定が、日米租税条約第5条にあります。PEとは恒久的施設(Permanent Establishment)を略したものです。作業場や工事現場などはPEにあたり、そういった施設を通じて、アメリカで儲けているなら課税しますよという考えです。

その源流は、プロシアにあります。昔ナポレオン時代のフランスがプロシアで、大儲けしたのに、プロシアに全然お金を落とさなかった。プロシアは「フランスは我々の国防・公共財を使って儲けたのに・・・・ひどいじゃないか」ということで、プロシアでPEの概念が生まれたと、かつてEUのIBFD(国際租税研究所)で聞きました。

Aさんがロッキー山脈のどこかに、作業場や工事現場を設け、財宝探しをした場合は、アメリカにPEを所有するとみなされ、PEに帰属する所得(経費を控除)に対して、アメリカで課税されます(所得累進課税)。

またアメリカの州法で、Aさんの作業場や工事現場がNexus(ネクサス)と認定されると、州所得税が課せられる可能性があります。Nexusとは、州と納税者間の課税における結びつきをいいます。連邦税のPEに近似する概念です。州によっては、他に使用売上税やProperty taxを課す州もあります。

●贈与と解釈される可能性も

このように、Aさんがアメリカで所得税を課税された場合は、日本において全世界所得を確定申告する際に、二重課税となっていますので、外国の税額として控除することができます。1年で控除できない場合は3年にわたって繰越控除できます。

州で使用売上税やProperty taxが課せられた場合、これらの税は所得税でありませんので、外国税額控除の対象とはならず、この部分に対しての二重課税は解消されません。

さらにアメリカでフェンさんの埋めた財宝がAさんに贈与されると解釈される可能性もあります。アメリカにおける贈与税は贈与する側が支払いますが、受け取った日本人側にも第二次的な責任が及ぶことがあります。

【取材協力税理士】

柴田 篤 税理士

関税・VAT還付、PE課税等通商税務・国際税務・国際組織再編等を得意とする。オランダ・香港・シンガポール会社設立・運営にも関わる。アメリカ登録税理士・会計士も在籍、アメリカ申告業務等も対応可能。また、欧米と提携事務所網を築いており、直近では、2018年春、欧州のAccordanceグループとパートナーシップを締結し協業開始した。クロスボーダー通販のGDPR等ホットな話題のコンサルも。

事務所名   :TradeTax国際税務・会計事務所  

事務所URL:www.japan-jil.com

(弁護士ドットコムニュース)

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