今回こそ信じていいのかーー。元参院議員でプロレスラーの大仁田厚さんが、還暦を迎える今年限りで引退することを表明している。過去に6度の引退と復帰を繰り返しているが、デイリースポーツによると、「今回は本当に本当に本当です」と真の引退であることを強調している。
スポーツ報知によると、大仁田さんは昨年11月、引退興行を発表した際に、「引退という言葉をあまりにも使いすぎて、ウソだとか、詐欺だとかいろいろ言われて申し訳なく思っています」と釈明。今回の引退でけじめをつけるとしている。
ネットでは、「昔の紳士服チェーンの閉店セールみたいだ」「二度と復帰しないとは言っていない」などと、揶揄するコメントも見受けられるが、今回の7度目の引退後に復帰した場合、「詐欺だ」として、引退興行のチケット代の返金を求めることはできるのか。西口竜司弁護士に聞いた。
●チケット購入者が「いつものことか」と思っていれば、詐欺にあたらない
「今日報道を見て『またか』という感じでした。私もプロレスファンの端くれとして『復帰はあるかな』という感じでみています」
また復帰した場合、詐欺にはあたらないのか。
「今回の件が民法96条1項に書いてあります『詐欺』にあたるか考えてみます。『詐欺』にあたれば、チケット購入は取り消され、代金を返還してもらうことができます。
『詐欺』とは、違法に詐術を用い相手方に錯誤を生じさせることをいいます。詐欺が成立するためには、(1)欺罔すること(だますこと)、(2)錯誤に陥らせること、(3)故意があることが必要になります。
今回の事案では、難しいところですが、引退するつもりもないのに引退するといった場合、(1)から(3)の要件を満たす可能性があります。ただし、チケット購入者の方が『いつものことか』と思っているような場合、(2)錯誤に陥っているとまではいえないので『詐欺』にならないでしょう。また、今回、本気で引退するつもりであれば、少なくとも(3)故意ではないので、後で考え直してまた復帰したとしても、詐欺にならないでしょう。
結論からいくと『詐欺』にあたるとするのは中々に難しいでしょうね。大仁田さんの引退を心から信じ、また、大仁田さんの方でも引退の時点で、復活するつもりがあるといった事情が必要でしょうね。
プロレスの世界では、話題作りも大切なので仕方ないのかもしれません。私も2回ほど有刺鉄線デスマッチを観戦しましたが、中々面白かったですよ」