過労死を無くしたい 苦しみを抱えた依頼者に寄り添い、その思いを未来へつなげる
相談に来た方が、ほんの少しでも幸せになれるように
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
高校生のときから芝居が大好きで、大学時代に自分で劇団を立ち上げて、演者として舞台に立ったり、脚本を書いたりしていました。将来は演劇に携わる仕事がしたいと考えたこともあったのですが、現実的に演劇一本で食べていくことは難しいと思ったんです。
法学部に所属していたこともあり、法律と演劇の両方に関われる仕事はないかと模索していたときに、「エンタテインメント・ロイヤー」という職業を知りました。
エンタテインメント・ロイヤーというのは、音楽や映画などのエンタテインメントに関わる案件を専門的に扱う弁護士のことです。具体的には、著作権問題や、イベント・コンサートを開催する際の権利関係の整備などをおこないます。「これなら面白そうだし、やってみたい」と思い、弁護士に興味を持ちました。
ただ、弁護士を目指したきっかけこそエンタテイメント・ロイヤーでしたが、今はエンタテインメント関係とは全く異なる分野に注力しています。
ーーどんな案件に注力しているのですか?
過労死問題に注力しています。
弁護士になったばかりの頃に所属していた事務所の所長が、過労死問題に取り組む弁護士の草分け的な存在で、多くのことを学ばせてもらいました。当時得た知見を活かそうと思い、独立してからも、過労死問題に取り組むNPOの方々と協力しながら、多くの案件に携わってきました。
また、離婚や男女問題といった家事事件にも注力しています。弁護士になった当初から扱っていた分野ですが、自分が結婚して子どもができてから、より高い関心を持って取り組むようになりました。夫婦関係や子育ての難しさと楽しさ、そして、家庭内のトラブルがその方の人生にどれほど重大な影響を及ぼすのかが、実感として理解できるようになったことが大きいと思います。
「相談に来ていただいた方には、ほんの少しでも幸せになってほしい」。心の底からそう思いながら、1つ1つの相談に対応しています。
亡くなった方の命を、その後に続く命につなげる
ーー島田先生の過労死問題への思いをお聞かせください。
仕事というのは、生きる手段であり、人によっては生きがいでもあり、人生においてすごく大事なものだと思います。そして、仕事をしていれば辛いこともありますし、それを乗り越えなければいけないときもあります。
辛さも楽しさも全て含めて、本人が価値を見出し、懸命にやってきたこと、そして、周囲も応援していたこと。それに命を奪われるのが過労死です。
過労死について相談に来るご遺族の中には、「自分が『もう少し頑張ろう』と励ましたことで、死に追い込んでしまったのではないか」と、自責の念を持たれる方も少なくありません。でも私は、どうかご自身を責めないでほしいと強く思っています。悪いのは過労死をさせてしまうような職場であって、決して、ご遺族やご本人の責任ではないんです。
また、過労死問題の依頼者のほとんどが、職場に対し、「非を認めてほしい」「今後二度と人の命を奪うことがないよう、生まれ変わってほしい」と望まれます。亡くなった方の命が、せめて無駄ではなかった、意味があったと思えるように、その後に続く命を失わせないようにしてほしいとおっしゃる方が多いです。
依頼者の思いを背負って、誰もが安全に働ける環境を実現するために、今後も過労死問題に取り組んでいきたいと考えています。
様々な人の思いが、不可能を可能にすることもある
ーー仕事をするうえで心がけていることは何ですか?
相談に来てもらえた時点で既に高いハードルを越えていると思うので、それ以上緊張することがないように、なるべくリラックスできる雰囲気作りを心がけています。
まずは依頼者と同じ目線に立って、気持ちに共感しながらじっくり話を伺います。こちらからお話しするときには、できるだけ丁寧に言葉を選びます。
依頼者は、専門用語だらけの難しい話を聞きたいわけではないと思うんです。あえて、適度にくだけた表現を使ったりして、その方の心のひだに触れられるようなコミュニケーションができるように意識しています。
ーー弁護士として活動してきた中で、特に印象的だったエピソードをお聞かせください。
過労死事件の一つで、数年越しに労災が認められたケースが印象に残っています。
過労死事件の多くは証拠があまり残っていません。この事件もそうでした。ご遺族が労働基準監督署に対して労災申請をおこなったのですが、証拠が乏しいなどの理由で認められず、労災不支給の決定が下されました。再審査を求めても判断は変わらず、最終的には国に対して、労災を認めない決定を取り消すように求める訴訟を起こしました。
この訴訟の最中に、国が、労災不支給の決定は誤りだったことを認め、これを取り消して労災認定したんです。国が自ら、労災を認めない決定を取り消すことはとても珍しく、なぜそんなことが起こったのだろうと思ってよくよく調べてみたんです。
すると、訴訟が始まってから労働基準監督署がおこなった聞き取り調査で、亡くなった方の元同僚の方が、当時の労働環境について詳細な証言をしてくれたことがわかりました。その証言が1つのきっかけとなって、最終的に、労災認定という結果に結びついたのだと思います。
同僚の方をはじめ、たくさんの人の思いが積み重なったことで、数年越しで労災認定という結果を勝ち取ったのだと深く感銘を受けました。
そして、たとえ証拠が乏しくても、諦めずに頑張らなければいけないということ、人の思いが積み重なると、不可能だと思われたことでも身を結ぶことがあるのだと、この事件を通して教えてもらいました。今も忘れられない事件です。
自然豊かな札幌で、子どもの成長を見守りたい
ーー休日の過ごし方やご趣味を教えてください。
子どもと遊んでいるというか、遊んでもらっているというか。夏は公園で遊んだり、冬は雪遊びやスキーに出かけたりしますね。
札幌は自然豊かで、食べ物もお酒も美味しいところです。私は東京出身なのですが、司法修習で札幌に来て以来その魅力に取りつかれて、この地で子育てすることを夢見てきました。実現できて本当に嬉しいです。
芝居を観ることは今でも大好きです。でも最近は、子育てが趣味のようなものですね。こういうことができるようになったとか、こういうことで泣いたとか、こういうことで喜んだとか、子どもの成長を日々見守ることがすごく楽しいです。
少しでも苦しさを減らすために、まずは悩みを吐き出しに来てほしい
ーー先生の今後の展望についてお聞かせください。
過労死問題はたびたび法律が改正されたり、新しい裁判例が出たりと、変化が目まぐるしい分野です。知識を常にアップデートして実務に取り組んでいきたいと思います。誰もが健康を害することなく安心して働ける環境を作るために、法律や行政の認定基準の改正に向けたロビー活動にも積極的に携わりたいですね。
過労死の案件とともに、家事事件にも引き続き注力していきます。また、長年、ヘイトスピーチの問題を扱ってきたので、社会から人種や民族差別をなくす活動にも力を入れていきたいと考えています。
ーー法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
どんなトラブルでも言えることですが、1人で抱えて悩んでいる状態が一番苦しいと思います。食欲がなくなったり、あまり眠れなくなったり。少しでもその苦しさを減らす、あるいはなくすためにも、一度相談に来ていただきたいと思っています。
法律は万能ではないので、必ず解決できるかどうかは分かりません。ですが、まずは誰かに話して、胸の内のモヤモヤを吐き出すことが大事だと思います。ぜひ気軽に、相談にお越しください。