携帯電話や光ファイバーなどの通信サービスの回線契約をめぐって、トラブルや苦情が増えている。こうした状況を受けて、総務省は一定期間内であれば無条件で契約を解除できる「クーリングオフ制度」の導入に向けた議論をすすめている。
総務省が7月に取りまとめた中間案によると、光ファイバーなどの固定回線の電話勧誘・訪問販売と、携帯電話回線の店頭契約をクーリングオフの対象にする。早ければ、来年の通常国会で法律が改正されることになるという。
しかし、なぜこれらのサービスは、これまでクーリングオフの対象ではなかったのだろうか。また、クーリングオフが導入されることで、どんな影響があるのだろうか。消費者問題にくわしい岡田崇弁護士に聞いた。
●電気通信サービスは「特定商取引法」の例外だった
「電話勧誘や訪問販売などによってサービスの契約を結んだ場合は、クーリングオフができます」
岡田弁護士はこのように切り出した。ということは、訪問販売や電話勧誘によって契約することが多い光ファイバーなどの固定回線は、いまでもクーリングオフができてもよさそうだが・・・。
「クーリングオフは『特定商取引法』という法律にもとづいています。しかし、光ファイバーなどの電気通信サービスには、例外として、特定商取引法が適用されていないのです」
携帯電話回線の場合はどうだろうか。
「携帯電話も、光ファイバーと同様に電気通信サービスにあたります。携帯電話の場合、店舗での契約が大半ですが、たとえ電話勧誘や訪問販売だとしても、クーリングオフは使えませんでした」
●携帯電話の契約は「料金の仕組み」が非常に複雑
なぜ、クーリングオフの導入が議論されるようになったのだろうか。
「これまでも電話勧誘や訪問販売は、消費者に不意打ちするような販売方法として、クーリングオフの対象となっていました。光ファイバーなどの固定回線の契約では、そうした販売方法がよくおこなわれている実態があります。
また、携帯電話の場合は、料金の仕組みが非常に複雑になっていたり、店員の説明が不足していたりして、利用者が全体を把握できなくなっています。さらに、通信速度や通信可能なエリアなど、サービスの品質については利用してからでないとわからないという問題もあります」
携帯電話の販売については、回線契約と「端末の販売」がセットになっているケースが多い。回線契約と同様に、「端末」にもクーリングオフは適用されるのだろうか。
「今回、総務省の案には、『SIMロック』がかかっていて、特定の携帯キャリアでしか使えない端末については、サービスの提供と密接に関わっているものとして、クーリングオフの適用を検討することが盛り込まれています」
ほとんどの端末には「SIMロック」がかかっているだけに、端末の扱いにも注目が集まりそうだ。