中国人技能実習生を最低賃金未満で働かせていたとして、岐阜市で婦人服製造業を営む女性社長が5月下旬、最低賃金法違反と労働基準法違反の疑いで、岐阜労働基準監督署に逮捕された。
岐阜労基署によると、女性社長は2018年1月から7月にかけて、中国人技能実習生3人に対して、岐阜県の当時の最低賃金(時給800円)を下回る給料(時給405円)しか支払わなかった疑いなどが持たれている。
岐阜労基署は2018年8月、実習生3人から相談を受けて、2018年9月に是正勧告を出した。ところが、改善されないばかりか、女性社長は虚偽の報告をおこなっていた。産経新聞によると、ほかの期間でも賃金が正しく支払われていない可能性があるという。
労働基準監督署による逮捕はあまり聞いたことのない話だが、実際のところはどうなのだろうか。技能実習の労働問題にくわしい指宿昭一弁護士に聞いた。
●労基法違反で逮捕は「極めてめずらしい」
労基法違反で逮捕というのは、極めてめずらしいです。年間数件程度ではないかと思われます。
今回のケースで逮捕に至ったのは、虚偽報告をしていること、ほかの期間も賃金不払いの可能性があることから、証拠隠滅の恐れがあると判断されたのではないでしょうか。それだけ悪質で、逮捕の必要性が強い事案ではないかと思います。
労基署は、身柄を拘束する施設を持っていないので、警察に借りなければなりません。逮捕から48時間以内に送検しないといけないので、大変です。それでも逮捕に踏み切ったところに、労基署の強い意志を感じます。ぜひ、全国の労基署は、このような強い意志で、実習生に対する労基法違反の事案に取り組んでほしいです。
ただ、違反した企業だけでなく、元請企業が無理な発注価格や納期を押し付けてきていたことが背景にあるとしたら、その元請企業の社会的責任も問われなければならないと思います。
技能実習制度では、労基法違反が絶えず起こり、実習生たち労働者が、奴隷的な状況で働かされています。そんな技能実習制度を創設して、維持しつづけている国の責任も問われるべきです。