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パワハラの深刻な「間接被害」 目撃者にも悪影響、慰謝料が認められる可能性
画像はイメージです(IYO/ PIXTA)

パワハラの深刻な「間接被害」 目撃者にも悪影響、慰謝料が認められる可能性

自分がターゲットにならなくても、誰かが怒鳴られたり、叱責されたりするのを見聞きすることは辛いことです。弁護士ドットコムにも、「同僚がパワハラにあっています」「見るにたえないので助けてあげたい」という相談が寄せられています。相談者によると、同僚は挨拶をされなかったり、聞こえるように悪口を言われたり、大声で失敗を責められるなどされているようです。

直接的にパワハラの対象とされた場合ではなくとも、職場でのパワハラを見たり聞いたりすることで心身に不調が生じた場合、パワハラの「間接被害」が成立する可能性があります。

もし、同僚へのパワハラによって体調を崩した場合、慰謝料は認められるのでしょうか。また、パワハラの「間接被害」の慰謝料額はどのように算出されるのでしょうか。黒柳武史弁護士に聞きました。

●「録音やメール等の客観的証拠」が重要

ーーパワハラの「間接被害」をうけた場合、慰謝料請求は認められるのでしょうか

「パワハラの間接的な被害について、慰謝料請求を認めた最近の裁判例として、東京高裁平成29年10月18日判決があります。

この事案では、会社の代表者が、特定の従業員に対し、前の代表者の不正行為に加担したと根拠なく決めつけ、『泥棒をしろといわれたらそのとおりにするのか』などと長時間にわたり非難しました。また、会社は同従業員に対し、正当な理由なく懲戒処分や賞与減額をおこないました。その結果、同従業員は会社を退職してしまいました。

裁判所は、同従業員に対する処分の無効や慰謝料請求等を認めましたが、さらに、代表者の言動を見聞きして退職するに至った、同僚の従業員らの慰謝料請求も認めています」

ーーなぜ、同僚たちにも慰謝料請求が認められたのでしょう

「同僚の従業員らは、直接パワハラの対象とされた従業員と立場が同じく、同じ職場で働いていました。裁判所は同僚の従業員らが、そのような状況下で、パワハラの内容を見聞きしていたことから、今後自分たちにも同じような対応があると受け止めることは当然であると評価しました。

このような場合には、加害者によるパワハラの直接的な被害者ではなくとも、当該パワハラにより精神的苦痛を被ったことにつき、不法行為(民法709条)の成立が認められ、慰謝料請求が認められる可能性があるといえます」

ーーパワハラを証明するためにできることはありますか

「上記裁判例では、代表者のパワハラに関する言動が具体的かつ詳細に認定されています。これは、被害者らが代表者の発言を録音しており、それを証拠として提出した結果だと考えられます。

パワハラについては『言った』『言わない』の争いになることが多いので、その証明のためには、録音やメールなどの客観的証拠を残しておくことが特に重要になるといえます」

●間接的な被害者の慰謝料額は40万円

ーーパワハラの「間接被害」の場合、慰謝料額はどのように決まるのでしょうか。

「違法行為の内容や程度、その他本件に関する一切の事情を踏まえ、裁判所の裁量により決まります。上記裁判例では、直接的なパワハラの被害者に対する慰謝料額が100万円とされたことに対し、間接的な被害者の慰謝料額は40万円とされています。

間接的な被害者は、直接的なパワハラの被害者とは、パワハラをうけた期間や内容、程度などが異なるため、このような金額の差異が生じたものと考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

黒柳 武史
黒柳 武史(くろやなぎ たけし)弁護士 賢誠総合法律事務所
京都府出身。2007年大阪弁護士会で弁護士登録。2020年京都弁護士会に登録換え。取り扱い分野は、労働事件を中心に、建築・不動産に関する事件や、一般民事・家事事件など。

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