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2018年07月15日 10時49分

「こんな酷い制度がまだ…」外国人技能実習生問題に取り組み10年、弁護士らがシンポ

「こんな酷い制度がまだ…」外国人技能実習生問題に取り組み10年、弁護士らがシンポ
指宿昭一弁護士【左】ら(7月14日、東京)

外国人技能実習生の支援を続ける、「外国人技能実習生問題弁護士連絡会」(実習生弁連)が設立10周年を迎え、7月14日に都内で記念のシンポジウムを開催した。

共同代表の大坂恭子弁護士は開会のあいさつで「国際貢献という制度の看板と実態の矛盾が噴き出している」と述べた。

また、同じく共同代表の指宿昭一弁護士は、「こんなひどい制度は絶対になくすことができるし、なくなるはずだと思っていました。10年たって、まだ残っている、忸怩たる思いです」と悔しさをあらわにした。

閉会の挨拶で、弁連の事務局長・高井信也弁護士が、「実習生制度が廃止され、弁連の解散を記念するシンポジウムを開きたい」と話すと、会場からはひと際大きな拍手があがった。

●10年たったけど、状況はさして変わっていない

実習生弁連は2008年6月、1~2年目の若手弁護士を中心に結成された。発端は2007年、指宿弁護士が担当していた岐阜県の縫製工場で働く実習生の労働審判だった。

事件が報道されると、熊本県で実習生の事件を担当していた小野寺信勝弁護士(弁連の共同代表)から電話がかかってきたという。当時、実習生問題はあまり知られておらず、全国的な弁護士のネットワークが必要だということで、翌年、弁連が結成された。

それから10年。今も状況はさして変わっていないという。シンポジウムでは、(a)基本給は7万円、残業代は時給400円しかない、(b)始業開始30分前の出社を命じられている、(c)家賃4万1000円の部屋に2人で住まわせられているが、2人とも4万円ずつとられている、など悲惨な報告が相次いだ。

●「実習生制度は当然、廃止すべき」

実習生問題をめぐっては、直近で大きな変化が2つあった。1つ目は、昨年11月に技能実習法が施行され、管理団体や受け入れ先を監督する外国人技能実習機構ができたことだ。

小野寺弁護士は、技能実習法について「一定の評価ができる」という。

「これまでは技能実習生の法律がなかったので、指針など一段階低いもので裁判するしかなかった。技能実習法で、パスポートの取り上げ禁止や(実習生からの)保証金の禁止が盛り込まれたのは良かった」

機構についても7月3日、技能実習法施行後初めて、愛媛県の縫製会社の実習計画が取り消されるなど、取り組みへの期待は高まっている。

一方で、転職ができないなど、「使用者が労働者を囲い込むという制度設計」には変わりがない。小野寺弁護士は、泣き寝入りがなくならないなどとして、「実習生制度は当然、廃止すべき」と訴えた。

●発注しているメーカーの責任は? 実習生周辺のビジネスも活発化

このほか、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウで、一部大手メーカーの海外工場での過酷労働問題に取り組む伊藤和子弁護士は、建設や縫製業などでの実習生問題が目立っていることを受け、「発注しているメーカーを可視化し、責任を問うていくことも大事」と企業の社会的責任の観点から語った。

また、愛知県労働組合総連合の榑松佐一氏は、技能実習法の施行後、500ページを超える詳細な運用要領ができたことを評価しつつ、「これを全部読める業者はいるのかな」。

新しくできた、所定の試験に合格すると3年間だった実習が5年に伸びる「技能実習3号」をめぐり、「受験ビジネス」が盛んになっていることや、人材会社の活発化についても報告した。

●「新たな在留資格」で実習制度はどうなる?

実習生問題で、もう1つの大きな話題は、今年6月15日に閣議決定された「骨太の方針」で示された「新たな在留資格」の創設だ。

2019年4月から、単純労働者の受け入れを目指すもので、具体的には技能実習を修了または日本語や技能の試験に合格した外国人労働者が最長5年働けるようにする。

弁連は、制度設計次第で、実習生制度が縮小する可能性もあれば、逆に悲劇が繰り返される恐れもあるとして、状況を注視している。

小野寺弁護士は、骨太の方針が「家族の帯同は基本的に認めない」としていることについて、「人道上問題があるのではないか」と懸念。もし実習生から連続した場合、最長10年、家族と暮らせないことになる。

また、自由人権協会の旗手明氏は、「実質的な移民政策という前提で取り組んで良い」として、「双方向の社会統合政策が必要だ」と主張。「外国人の方に日本語などを学んでもらうだけではなく、たとえば義務教育の過程で日本の子どもたちに共生社会を考えさせる。どちらも変わっていく必要がある」と述べた。

新たな在留資格をめぐっては、すでに経産省と各業界の間で意見交換が始まっている。

(弁護士ドットコムニュース)

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