厚生労働省の「労災認定基準」がしばらく見直されておらず、実情にあっていないとして、過労死弁護団全国連絡会議(代表幹事:松丸正弁護士)は5月23日、厚労省に対して、認定基準を改定するよう求める意見書を提出した。同会議がこの日、厚労省記者クラブで会見を開いて明らかにした。
現行の「脳・心臓疾患の労災認定基準」では、発症前1カ月「100時間」、または発症前2〜6カ月で1カ月平均「80時間」を超える時間外労働が認められる場合、業務との関連性が「強い」と評価されている。意見書は、発症前1〜6カ月で1カ月平均「65時間」を超える場合は「強い」と評価すべきだとしている。
厚労省は1961年、「脳・心臓疾患の認定基準」を策定したが、2001年12月に現行のものに改定されて以降、見直されていない。いわゆる過労死ラインとされる「月80時間」は、この基準をもとになっている。また、「心理的負荷による精神障害の認定基準」も2011年の制定以降、改定されていない。
過労死弁護団全国連絡会議の川人博士弁護士は会見で、脳・心臓疾患の認定基準について「さまざまな職場の変化や、労災認定・判例の変化、医学的な知見などを踏まえて、改定が必要だ」とした。また、精神障害の認定基準については「過労死防止法(2014年)ができてから、新たに調査がおこなわれたことも考慮に入れるべき」と述べた。
意見書はほかにも、脳・心臓疾患の認定基準について「勤務間インターバルが11時間確保されていない場合がおおむね6割以上となる場合、月65時間の時間外労働に相当する」、精神障害の認定基準については「パワハラの評価を適切にすべき」「複数の事業所で働く(ダブルワーク)場合、労働時間の負荷を合算して評価すべき」など、複数の提言がされている。