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大磯町「まずい給食」異物混入の報告相次ぐ…業者の法的責任は?
写真はイメージです(ManabuAsakawa / PIXTA)

大磯町「まずい給食」異物混入の報告相次ぐ…業者の法的責任は?

神奈川県大磯町の2つの町立中学校の給食で、大量の食べ残し問題が発生している。町は昨年、町立中学校に給食を導入したが、生徒たちから「まずい」「冷たい」と不評をかったうえに、髪の毛や虫、プラスチックなど異物混入が相次いで報告されているのだ。

大磯町は昨年1月、保護者アンケートの結果にもとづいて、学校給食をはじめた。給食施設をつくるなど初期投資をおさえるため、東京都に本社がある業者の神奈川県内の工場から弁当を持ってくるデリバリー方式を採用した。

だが、今年7月に実施した生徒向けのアンケートでは「味が薄い」などの声が多かった。さらに、各学校によるものだが、給食開始から今年7月までの1年6カ月で、異物混入の報告が計84件にものぼった。そのうち15件については、工場で混入したとみられるという。

大磯町は、業者との委託契約の解約を含めて検討をすすめている。今回のように、異物混入の給食は、どんな法的問題があるのだろうか。給食が「まずい」「冷たい」ことについては、どうだろうか。石崎冬貴弁護士に聞いた。

●製造過程で混入した場合

「異物混入のルートについては、あまり断定的なことは言えませんが、もし仮に、製造過程(業者の工場など)において混入したのであれば、業者側は法的責任を負います。

今のところ、異物混入による体調不良や具体的な損害の話は出ていませんが、仮にそのようなことが起これば、契約者である大磯町の教育委員会は、業者に対して、契約上の責任を追及できます。また、給食を食べた子ども自身(未成年なので保護者が代理することになります)も、製造物責任を追及することができます」

学校内で配膳する際に異物が混入したとすればどうだろうか。

「そうであれば、業者の責任といえません。ただ、今回の給食は、密閉されたお弁当の形式ですから、子どものいたずらなど、本当にイレギュラーな理由を除いて、学校内で異物が混入するというのはあまり考えられないように思います」

●弁当が「冷たい」のはある意味当然だが・・・

「まずい」「冷たい」という弁当について、責任はないのだろうか。

「今回の事件が法的に難しいのは、『まずい』『冷たい』といった主観的な評価が含まれるためです。

弁当である以上、冷たいのはある意味当然のことです。『美味い』『まずい』という評価に至っては、一人ひとりの好みによって分かれます。

腐った給食を出せば明らかに違法で、損害賠償の話になります。しかし、冷たくてまずい給食を出したからといって、ただちに違法にならないということです。

また、一般的に、子どもが好きな食べものと、成長期に必要な食べもの・栄養素も異なります。味の濃い肉ばかり出すわけにもいかないでしょう」

今回のケースについてどう考えるか。

「とはいえ、これだけ異物混入の報告があるのは、それ自体、明らかにおかしいことですから、まずは原因究明が必要です。また、子どもたちが口をそろえて『まずい』というからには、味付けにも何か原因があるのかもしれません。

地元からは、港町としての地産地消の声も聞かれるようですから、法律の問題で片づけるのではなく、学校・家庭・地域それぞれの声を反映して、最もよい給食制度を整えてほしいと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

石崎 冬貴
石崎 冬貴(いしざき ふゆき)弁護士 法律事務所フードロイヤーズ
東京弁護士会所属。一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。自身でも焼肉店(新丸子「ホルモンマニア」)を経営しながら、飲食業界の法律問題を専門的に取り扱い、食品業界や飲食店を中心に顧問業務を行っている。著書に「なぜ、一年で飲食店はつぶれるのか」「飲食店の危機管理【対策マニュアル】BOOK」(いずれも旭屋出版)「飲食店経営のトラブル相談Q&A―基礎知識から具体的解決策まで」(民事法研究会)などがある。

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