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来年の選考解禁「6月」に前倒し、企業と学生を振り回す「就活ルール」は必要なのか?
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来年の選考解禁「6月」に前倒し、企業と学生を振り回す「就活ルール」は必要なのか?

経団連は11月上旬、新卒学生を対象にした採用活動の解禁時期を再び変更し、現行の8月から6月に前倒しする方針を発表した。今年の選考から後ろにずらして8月に変更したが、企業と学生の双方から批判が出ていた。

報道によると、経団連は、ルールとなる「採用選考に関する指針」を改定して、会員企業1300社に順守を呼び掛ける。ただ、今年も「解禁破り」があった。経団連のアンケートでは、87%の企業が「会員、非会員の別なく、日程が守られていなかったと感じる」と回答している。

こうした動きに対して、経済評論家の山崎元氏はダイヤモンドオンラインの記事で、現状のルールが経団連による「採用カルテル」だとして、「長期的な問題解決のためには、この採用におけるカルテル行為である経団連の就活ルールを廃止に追い込むことが適切だ」と主張している。

必ずしも守られているわけではないとしても、企業の採用活動を拘束して、振り回すことになっている経団連のルールに、問題はないのだろうか。河野祥多弁護士に聞いた。

●改めるべき点や工夫の余地はたくさんある

「本来、就職活動というものは、自由に行われるのが原則です。しかし、就職活動が長期化することで、学生と企業の双方の負担が大きくなることを防ぐために、経団連が『採用選考に関する指針』を作成しました。これがいわゆる就活ルールと言われるものです。

このように、就活ルールとは、あくまでも一社団法人である経団連が作成した内部ルールにすぎないのですが、事実上は、就活ルールが就職活動に与える影響は大きく、学生と企業がそれに振り回されているのが現状です。

この点、現実問題として、就活ルールの内容を議論することも、必要なことですが、もっと根本的な問題から考えることも大切だと思います」

どのようなことを考えるべきなのか。

「たとえば、企業にとっては、採用活動の時期の分散化や新卒にこだわらない柔軟な採用等、考えを改めるべき点や工夫できる余地がたくさんあります。また、学生にとっても、大企業にこだわらずに、有望な中小企業への就職を考えるなど、今までとは違った視点で物事を考えてみることも有益だと思います。

逆に言えば、就活ルールというもの自体が必要のない社会が、本来的には一番望ましい状況だと言えるのです。そのためにも、就活ルールの日程見直しなどの小手先の議論だけではなく、社会全体が『働く』ということの意義を考えていくことが重要だと思っています。

学生の皆さんにとっては、毎年のように変わる就活ルールに振り回されて大変だとは思いますが、就職活動を通じて、自分を見つめ直し、どのように社会とつながり、社会に貢献できるかを真剣に悩みながら、がんばってもらいたいと思っています」

河野弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

河野 祥多
河野 祥多(こうの しょうた)弁護士 むくの木法律事務所
2007年に茅場町にて事務所を設立以来、個人の方の相談を受けると同時に、従業員100人以下の中小企業法務に力を入れている。最近は、ビザに関する相談も多い。土日相談、深夜相談も可能で、敷居の低い法律事務所をめざしている。

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