「在宅勤務が解除された」「週3の強制出社になる」 こんなとき従業員は交渉できる?
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「在宅勤務が解除された」「週3の強制出社になる」 こんなとき従業員は交渉できる?

職場でトラブルに遭遇しても、対処法がわからない人も多いでしょう。そこで、いざという時に備えて、ぜひ知って欲しい法律知識を笠置裕亮弁護士がお届けします。

連載の第15回は「在宅勤務が解除に、交渉はできるのか」です。海外の例では、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏が、従業員に「リモート勤務は今後容認しない」とし、週40時間以上出勤しないならば辞めるよう呼びかけたことが話題になりました。

日本でも「在宅解除された」「週3の強制出社になる」といったつぶやきがツイッターで見られます。果たして、従業員はオフィスへの出勤について交渉できるのでしょうか?

●オフィスへの出勤を義務付ける動きも

新型コロナウイルス感染症拡大とともに急激に普及したテレワークですが、緊急事態宣言解除の後、企業によっては社員に出社を求めるようになり、オフィスへの出勤をする方が増えています。

テレワークには、時間と場所を選ばずに就労ができるため、(1)生産性を向上させることができるうえ、(2)遠隔地にいる多様な労働者を活用できること、(3)育児や介護に従事する労働者の雇用を継続しやすいこと、(4)国際化に対応しやすいこと、(5)都心に広大なオフィスを維持する必要がなくなりコスト削減に役立つこと、(6)災害時に事業を継続させやすいこと、といったメリットがあると考えられてきました。

そのため、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための人流抑制と相まって、多くの企業で導入が進められてきました。

人流抑制以外にも多くのメリットがあるため、緊急事態宣言解除後もなお、多くの企業において、テレワークが維持されています。

他方で、一部の企業では、テレワークを廃止し、オフィスへの出勤を義務付ける動きも出てきています。

コロナ禍の中でテレワークによる働き方がかなり一般化し、求人の際にも勤務形態をフルリモートであると明示した上で採用をしている企業は相当数に上りました。

私生活等の理由により、フルリモートであれば入社したいと考えて応募し、実際にフルリモートという条件のもと採用された方に対して、突然連日出社を求めるような業務命令を下すことは、本人の同意がない限りできません。

●勤務形態が「フルリモート」と限定されていない場合は?

  他方で、勤務形態がフルリモートなどと限定されておらず、コロナ禍の中で一時的にテレワーク勤務となっていた方に対して、出社を求めることは原則として契約違反等の問題は生じません。

しかし、他の方にはテレワークを認めているにもかかわらず、嫌がらせ等不当な目的でその方に対してだけ出社を求めたり、テレワークが相当の期間続くという前提で、育児や介護等の負担を負っていた方に対し、いきなり予告なく制度を廃止し、連日の出社を求めるようなことがあれば、出社命令が人事権の濫用であると判断される可能性があるでしょう。

多くの企業では、テレワーク制度を導入するにあたり、就業規則において、前述のようなテレワークのメリットを踏まえた制度目的を明確化し、制度目的を踏まえ、誰を適用対象者とするかについて明示しています。

就業規則のルールを変更するためには、従業員の過半数代表者の意見を聴取しなければなりませんが、過半数代表者が誰の意見も聞かずに、勝手に会社の言いなりに署名をしてよい問題であるはずがありません。

就業規則によって導入されたテレワーク制度を、いつまで、どのような形で継続していくかについては、従業員の方々の生活に大きな影響を与えるものである以上、できるだけ多くの社員の方たちの声をくみ取ったうえで、労使間でよく話し合っていくべき問題です。

そのような多くの従業員に共通する労働条件について、労使間で協議するために存在するのが労働組合です。そこで、従業員側としては、労働組合を通じた交渉をしていくべきでしょう。社内に労働組合がないという場合には、できるだけ多くの同僚とともに、社外の労働組合に加入し、交渉をしていくということも検討した方が良いかもしれません。

(笠置裕亮弁護士の連載コラム「知っておいて損はない!労働豆知識」では、笠置弁護士の元に寄せられる労働相談などから、働くすべての人に知っておいてもらいたい知識、いざというときに役立つ情報をお届けします。)

プロフィール

笠置 裕亮
笠置 裕亮(かさぎ ゆうすけ)弁護士 横浜法律事務所
開成高校、東京大学法学部、東京大学法科大学院卒。日本労働弁護団本部事務局次長、同常任幹事。民事・刑事・家事事件に加え、働く人の権利を守るための取り組みを行っている。共著に「新労働相談実践マニュアル」「働く人のための労働時間マニュアルVer.2」(日本労働弁護団)などの他、単著にて多数の論文を執筆。

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