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「ノルマ未達なら給料半額」 そんな上司のやり方は法的にアリ?
写真はイメージです(tkc-taka / PIXTA)

「ノルマ未達なら給料半額」 そんな上司のやり方は法的にアリ?

上司から「『新規契約目標が未達なら給料を半額にする』となったら、やる気になりますか?」と言われ、「減額でいいですよ」と口頭で同意してしまった人が、弁護士ドットコムに相談を寄せました。

相談者によれば、上司は「それしか、あなたをやる気にさせる方法がわかりません。人事権を持っているので辞めさせることは簡単だけど、そうしたくない」と続けたそうです。同意してしまったのは「(話し合いが)面倒になってきたから」だといいます。

「ノルマ未達なら給料半額」。そんな上司の主張は、認められるものなのでしょうか。労働者が同意してしまった場合には、減額されてもやむを得ないのでしょうか。田村優介弁護士の解説をお届けします。

● 一方的な給与減額は契約に反する

ーー「ノルマ未達なら給料半額」という上司の主張は認められるのでしょうか。

今回の事例は、雇用契約、すなわち「仕事をする上での条件の約束」を、後から労働者にとって不利な条件に変更するものです。雇用契約は会社と労働者とで約束したものですから、この約束を会社が勝手に破って給料を下げることは契約違反になるのでできません。

たとえ、投稿主が「ノルマ未達」であっても、「ノルマの達成」は当初の給与支払いの条件ではないのですから、給与を減額する理由になりません。

しかし、悪質な企業の場合、「それならば、労働者に同意させてしまえば問題ないだろう」と考えて、今回のケースのように労働者を呼び出して、「給料減額に同意します」という書類にサインを求めることがあります。

上司がどんなにしつこく同意を求めてきたとしても、あくまで会社からの「お願い」にすぎず、書類にサインをする義務はありません。「少し考えさせてください」などと答えて、いったん保留し、すぐに労働組合や弁護士、まわりの人などに相談すべきです。

● 同意してしまった場合でも、無効になる可能性あり

ーー相談者は、上司の話に同意してしまったことに対しても不安を抱いているようです。

仮に同意してしまっても、給料が減額された結果として、時給換算で最低賃金を割っているような場合は、もちろん合意は無効です。今回のケースのように「ノルマ未達なら給料半額」という横暴な内容であれば、該当する可能性も十分にあるでしょう。

そのほか、会社の就業規則や労働協約に反した給与減額の合意も無効となります。

こういった事情がなくても、同意が無効になることがあります。最高裁判例では、同意が本当に労働者の真意から出たものでなければならないとして、そうではない場合、たとえ形の上で同意があっても、同意は無効であるとしています。

また、今回のように「辞めさせるのは簡単」などといって相談者にサインを迫り、相談者が「サインしなければクビになってしまうのか」と誤解してサインしたのであれば(これを法律用語で「錯誤」といいます)、そのような誤解に基づくサインは無効です。なお、労働者を適法に解雇することは極めて困難です。

同意してしまったからとあきらめずに、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

田村 優介
田村 優介(たむら ゆうすけ)弁護士 城北法律事務所
ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団。残業代請求、不当解雇、パワハラなど、労働問題を多く手がける。共著「働く人のためのブラック企業被害対策Q&A」など。

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