2020年から続くコロナ禍。緊急事態宣言などで、外出の自粛が要請される一方、航空、新幹線、高速バスなどの中長距離移動を支える交通インフラ・観光産業に打撃を与えている。
交通運輸や観光などの業界で働く約60万人が加盟する全日本交通運輸産業労働組合協議会(交運労協)によると、2020年度上半期決算では、「鉄道・バス」「空運」などでいずれも赤字だった。こうした苦境に、従業員の雇用不安も続いているという。
そんな苦境が続く交通インフラ・観光産業で働く人たちを支援しようと、交運労協は2月15日、現場の声を紹介する特設サイト( https://www.keyworkers.jp/ )を立ち上げ、ドキュメンタリーショートムービーを発表した。
●企業の枠を超えた「キーワーカーズ」
ショートムービーのタイトルは、「KeyWorkers」(キーワーカーズ)。暮らしを支える移動の現場の労働者は「KeyWorker=日々の生活を維持するために必要不可欠な職種」という考えに由来する。
約5分間のショートムービーでは、JR四国の宇和島駅、熊本市交通局の路面電車、東海汽船、JALエンジニアリングなどで働く人たちの姿が映し出される。陸・海・空の12社を横断して制作されているという。
例えば、駅職員の「ポップをいっぱい作成してみたりとか、何かお客様がいない間にもできることをして、列車が動き出した時により多くの方に乗っていただけるように」、航空会社の整備士の「地上に飛行機がいることに多くなりましたので、飛行機がいつでも飛べるように心がけて整備をしています」といった生の言葉だ。
この日の会見で、交運労協は、「私たちは厳しい状況の中、感染防止対策に最新の注意を払いながら、職務を全うしています。笑顔で利用していただける日が来ることを願ってます」と呼びかけた。
陸・海・空の交通インフラ産業で働く人たちを紹介する動画「KeyWorkers」より
●公共交通機関の従業員に対する偏見・差別も
また、交運労協には、次のような従業員の声が寄せられているという。
「感染リスクを抱えるなかで、日本経済を支える社会インフラとして安全輸送を担うエッセンシャルワーカーであると言われながらも、その重責に見合った賃金や手当が支払われていない」
「公共交通機関という特性から、不特定多数の利用者と接するため、家族が地域や学校で偏見・差別を受けている」
交運労協では、国に対して中長期的な支援策を働きかける一方、公共交通事業者に対するワクチンの優先接種も求めている。
慶島譲治事務局次長は、「労使一体となって、安全安心でご利用いただけるよう、事業者も感染予防のガイドラインを作成しています。利用者の方にもこのガイドラインを守って頂ければ」と話した。