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2021年01月19日 10時01分

「職場でコロナ」 知ってるのは一部の社員だけ…会社に「周知する義務」はないの?

「職場でコロナ」 知ってるのは一部の社員だけ…会社に「周知する義務」はないの?
画像はイメージです(8x10 / PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大がすすむ中、職場で感染者が出たという人もいるだろう。その際、感染に関する情報を知らせてもらいたいと思うのは不自然ではない。

ところが、社員への周知を徹底していないケースもあるようだ。弁護士ドットコムにも「コロナ感染者が出たという事実が一部の社員にしか知らされていない」という相談が寄せられている。

相談者がつとめる企業では、相談者を含む社内の一部でしか事実が共有されておらず、同じフロアで共に働く大多数の社員へは周知されていないという。事実を知らない社員に尋ねられた場合、どう答えていいのかと悩んでいる。

職場で感染者が出たら、家族への感染リスクなど、万が一の事態に備え、一時的にホテルに宿泊するなどの対応をとろうとする社員もいるかもしれない。しかし、それも事実を知らされないことには困難だ。

社内でコロナ感染者が出た場合、企業は社員へ周知する義務はないのだろうか。企業法務にくわしい島田直行弁護士に聞いた。

●安全配慮義務あるが、プライバシー保護も無視できない

——社内で感染者が出た場合、企業には社員へ周知する義務があるのでしょうか。

企業は、新型コロナをはじめ、特定の感染症について、社内で周知する義務を当然には負っていません。

ただし、企業は、社員との労働契約にもとづいて、安全配慮義務を負っています。安全配慮義務とは、社員が安全で健康な状態で勤務することができるように配慮する義務です。この安全配慮義務のなかには、新型コロナについての感染予防も含まれます。

——どのように安全配慮義務を果たすことになりますか。

企業としては、社員が感染しないように配慮するのみならず、感染者が出た場合には感染がさらに広がらないように防止する義務があると考えられます。感染者の情報を把握しながら何ら対策をしなければ、企業として安全配慮義務違反にもとづく損害賠償責任を負担する可能性もあります。

社員としては、「社員のなかに感染者が出た」という事実を認識しなければ具体的な対策もとることができません。企業としては、社内で感染者が出た場合には必要な範囲で、ほかの社員にも伝えるべきと考えます。

——どの程度の範囲で周知する必要があるのでしょうか。

企業は、感染者のプライバシー保護とほかの社員の安全のバランスを考慮しながら開示範囲を検討していくことになります。

安易な情報開示によって感染者のプライバシーが侵害されることがあれば、企業としても責任を追及される可能性があります。感染症法4条は、国民に対して患者の人権に配慮した対応を求めています。この規定の趣旨は、企業の対応においても考慮されるべきです。

したがって、感染者に関する情報開示の範囲は、「感染の拡大を防止する」という目的達成に必要な範囲でなければならないでしょう。

ただし、社員相互の関係が密接であるため、感染の事実を直ちにほかの社員が知る場合もあるでしょう。企業は、社員を通じて、間違った情報が外部に出てしまうことを防止しなければなりません。間違った情報が拡散すると感染者の人権が侵害され、かつ企業としても風評被害を受けることになりかねません。

間違った情報の拡散を防止すべく、情報開示は、担当者を決めて、企業として統一的になされるべきです。

●正確かつ平等な情報提供が組織のあるべき姿

——「いつ」「どこまで」情報開示すべきかの判断は悩ましそうです。

新型コロナを契機に、企業には危機状態における情報開示の在り方を見直していただきたいと考えています。

たとえば、社内で感染者が出たことをくわしく知っている社員と一切知らない社員がいるとなれば問題になりかねません。あいまいな情報こそ推測が加味されて、噂として拡散してしまうものです。何も知らない社員が耳にした場合、ことさら不安になるはずです。

仮に「あなた知っているの」と質問された場合、質問された側としても回答するべきか悩むことになります。情報の偏在は、職場の分断すら導くことになりかねません。

正確かつ平等に情報を提供することが組織としてのあるべき姿です。企業としては、(1)感染者に配慮したうえで、新型コロナの感染について開示する情報を確定し、(2)確定した情報を社員に平等に伝えるべきです。

——「いまだ把握が不十分」という場合はどう対応すればよいのでしょうか。

企業としても「わからない」という場合はあるはずです。その際は「わからない」と明確に伝えることが必要です。

取り繕うとかえって「情報を隠しているのではないか」と社員を不安にさせてしまいます。「わかること」と「わからないこと」をしっかり分けて伝えることが社員にとっても安心につながります。

新型コロナは、特定の人の責任という類いのものではありません。あらゆる人に降りかかる可能性があるものです。だからこそ「支え合う」という素朴な人間の姿が何より求められます。そのための情報開示と捉えていただきたいと思います。

取材協力弁護士

山口県下関市生まれ、京都大学法学部卒、山口県弁護士会所属。著書に『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』、『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』(いずれもプレジデント社)
事務所名:島田法律事務所

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