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2020年12月01日 10時19分

テレワーク普及の鍵「仕事は会社で、という固定観念を捨てよう」 池添弘邦氏(労働政策研究・研修機構)に聞く

テレワーク普及の鍵「仕事は会社で、という固定観念を捨てよう」 池添弘邦氏(労働政策研究・研修機構)に聞く
労働政策研究・研修機構の調査結果より。写真(ロストコーナー / PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大で、自宅などで仕事をするテレワークが浸透しました。通勤時間がなくなり自由な時間が増えた一方、オンとオフの切り替えが難しく、長時間労働につながったり、同僚や上司とコミュニケーションがとれず仕事がスムーズにいかなかったりといった課題が出てきています。

テレワークを継続するために企業と労働者はどんな工夫が必要なのでしょうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)で働き方や雇用環境について研究する、池添弘邦・副統括研究員に聞きました。(ライター・国分瑠衣子)

画像タイトル 労働政策研究・研修機構の池添弘邦・副統括研究員

●緊急事態宣言で急拡大したテレワーク、縮小はなぜ?

――JILPTが今年5月から8月にかけて個人へ複数回行った調査では、緊急事態宣言を受けて、急激にテレワークが拡大しましたが、6月、7月と月を追うごとに縮小したことが明らかになっています。なぜテレワークをする人は減ったのでしょうか。

「緊急事態宣言が出て、企業は感染拡大に対して危機意識を持ち、急いでテレワークを導入したようです。しかし、宣言が解除されると感染症(対策)に対する“慣れ”もあるかもしれませんが、『やはり仕事のやり方としてテレワークは違うよね』とか『出勤する方が働きやすいし、テレワークは普通じゃないよ』という従来からの固定観念が再び表に出てきたのではないかと思います。

私は10年ほど前からテレワークに関する社会調査を行っていますが、その上で今回の状況について、テレワークへの抵抗感が企業と労働者のどちらにもあるからではないかと考えています。

ただ、テレワークの実施割合が減ったとはいえ完全に以前の状況に戻ったわけではないので、テレワークは今後も続くと思います。

会社側にとっては販管費などのコスト削減はもちろんですが、労働者が通勤時間の負担から解放されることで、通勤手当を支払う必要がなくなったり、自宅で仕事をする分、生産性が上がることで、間接的に目に見えない価値を享受できるメリットもあるからです。労働者にとってもプライベートの時間を確保できますし、介護や育児といったワークライフバランスの面でも有効です」

●テレワークだからといって、評価軸を大きく変えるべきではない

――テレワークで上司が部下の仕事の様子を把握しにくくなり、人事評価を営業数字など定量化された「成果評価」に比重をおく会社が増えるのではないかという懸念もあります。

「テレワークだから特別な働き方をしているという考え方は好ましくないと思います。例えば営業職は、対面営業が難しくなり仕事がある程度制約されるのは仕方のないことです。これまでとは違う形、つまりオンラインで営業をして、相手とのコミュニケーションが取りづらくなる分、商談が成立する可能性は低くなるのではないかと思います。

営業職以外の職種でも、対面ではないがゆえに仕事の仕方に制約が生じるでしょうから、そうした制約がある部分を差し引いて考える必要があると思います。

また、例えばですが、オンライン会議のセッティングや説明資料の準備などに要す時間がこれまでの仕事の仕方よりも増えるかもしれません。何せ対面でもコミュニケーションが難しくなっているのですから、それを補う別の方法に費やす時間がかさむかもしれません。それなのに『このコロナ禍の状況を乗り越えて、一生懸命働けよ』と成果だけを求めるのは従業員にとって厳しいのではないかと思います。

コロナ禍でのテレワークは事業を安定的に継続させること、また、感染拡大を防止することが目的です。テレワークになったからといって評価軸を大きく変えることは本来の目的を忘れてしまっていると思います。

テレワークがほとんど普及していない10年ほど前に、ある大手メーカーの子会社に調査に行き、ヒアリングをしたことがあります。その会社は、優秀な女性のシステムエンジニアが出産を機に退職してしまうという課題を抱えていて、人材流出を防ぐためにテレワークを導入したということでした。

当時の社長さんは『テレワーク導入で業績が横ばいになっても、管理職になる人材が残るほうが重要だ』とおっしゃっていました。それぐらいの気概をもって、また、長い目で見たテレワークのメリットを考えて導入しなければ息切れしてしまうと思います」

――「テレワーク7割」など出勤率を定めている会社の中では、上司が部署の出勤率を気にして、本当に出社が必要な時に行きにくいという声も出ています。

「目標を定めること自体は良いと思いますが、それに縛られて数合わせするテレワークの運用にはまったく意味がありません。今般のテレワーク本来の目的を見失っているだけです。この際、テレワークの導入と運用には、組織のトップが従業員に対して明確な動機付けと意識付けをすることが重要です。

管理職による職場の管理や人事部による制度運用ももちろん大事ですが、根っことなる部分、つまりテレワークの導入と運用の目的を明確にすることはそれ以上に大切ではないかと思います」

●オンラインでも「雑談の場」は必要

――週5日のテレワークではなく、2、3日にして残りの日は出勤など組み合わせている会社が多いと思います。ベストミックスの形はあるでしょうか。

「それはすごく難しい問題です。一人一人の働き方や職場での立場、仕事の性質によると思います。結局、ベストミックスは何かというと、組織ではなく、個々人の問題になるのだと思います。

例えば裁量労働制が適用されている職種の人は、普段から時間の配分など自律性が高いので、その人なりのベストミックスを見つけやすいでしょう。裁量労働制でない、職務遂行の仕方に普段から自律性が認められていない(所定労働時間で管理されている)人の場合は、手探りで自分なりのベストミックスを見つけ出していく必要があると思います。

なので、これまで労働契約上、出社が基本だった人が、いきなり全部自分で決めることを求められると、負担感が相当あるだろうと思います。時間はかかるかもしれませんが、個々人が自律性を持って、つまり、自分が仕事に使う時間、家庭生活に使う時間をよく考えて、自分なりのベストミックスを見付けて行く必要があると思います」

――出社して同僚との雑談で得る情報は、仕事を効率的に進める上で大きいと思います。テレワークでは雑談しにくい状況です。

「確かに、雑談の効用は仕事をする上でとても大きいと思うので、その穴をどうやって埋めることができるかは、意外に真剣に考える必要があると思います。例えば同僚の間でLINEのグループをつくったり、月に1回はオンラインで職場単位の雑談の場を設けたりといった、気軽にコミュニケーションをとれる環境をつくることが必要ではないでしょうか。

それと、コミュニケーションに関してやってはいけないことの一つとして、上司が部下の仕事の進ちょく状況について過剰に干渉することです。これまでしっかりと仕事をしてきた人については、上司は部下を信頼して頂いた方がよいと思います。待つ姿勢や、適度な距離感が大事だと思います。過剰な干渉は、かえって部下のパフォーマンスを下げかねないからです。

ただ、普段から仕事のパフォーマンスが高くない人へのかかわり方は別です。このためには、何か基準をつくったらよいのではないでしょうか。例えば、人事評価がAからDまで4段階あって、CとDの人には、管理職や上司が細かく確認するようなタスクを会社が与え、テレワークをしている人から管理職や上司に日々の報告を上げてもらうことが考えられます。

管理職や上司は部下のキャラクターを理解した上で、労働時間や進捗の管理を普段からチェックしておけば、テレワークでも相当程度対応することができると思います。

難しいのは、部下がメンタル面での不調を感じているケースです。これは管理職個人ではなく、組織としての対応が必要だと思います。組織全体でどう配慮していくかについては、これからの検討課題になっていくと思います。

管理職としては、最低限、これまで以上に注意深くコミュニケーションを取って不調を敏感に感じ取るとか、これまでと違う負荷を抱えていないか、よく確認した方がよいと思います。なお、厚労省でも企業からヒアリングをしたりして、今後のテレワークの在り方について検討を進めていますので、政策動向に注目して頂ければと思います」

●テレワークの良さを損なわない働き方の模索を

――テレワークは場所の制約からは解き放たれていますが、労働法上、時間の制約はあります。テレワークでは細切れ労働が生じたり、昼間働かず深夜に働いたりするケースがあります。会社側も時間管理が難しくなり、勤務時間中はカメラをオンにする会社もあると聞きます。テレワークに関する法整備は必要でしょうか。

「これもとても難しい問題です。これまで、法律による時間管理は、実際に働いた時間を正確に把握して、法定時間外労働や深夜労働に対して割増賃金を支払うことを軸としてきました。しかし、長時間労働による過労死などが問題になってきたため、今では、生命や健康の確保、あるいは安心して働けることを視野に収めるようになってきました。

また、変形労働時間制やフレックスタイム制といった弾力的な労働時間制度ですとか、裁量労働制といった自律的な労働時間制度も設けられています。

今の労働時間規制にはこうした多様な目的ですとか、複線的な規制があることを考えると、テレワークだけに注目して時間管理の法整備をするとなると、相当な困難があるように思われますし、また、実務に混乱を生じさせかねないのではないかと懸念します。

したがって、雇用型テレワークについて今のところ法整備をする必要はないであろうと個人的には考えています。業態や職種によってテレワークの実情はさまざまですし、しかも、これまでの調査から、現行法制の枠内でも十分に対応できていると考えるからです。

ただ、現実の労務管理では労働時間について様々な問題が生じているようですから、今まさに行われている厚生労働省の検討会でよく議論してもらって、ガイドラインに反映させていくのが適当だろうと思っています。その際、国には、在宅勤務の良さを損なわない働き方、管理の仕方を模索してもらえればと思っています」

――日本でテレワークが定着するために、一番大事なことは何でしょうか。

「仕事は会社に行ってするものだという固定観念を捨てるということに尽きると考えています。固定観念を捨てれば、どこにいても仕事はできると思います。

実際、例えば営業職の人は外勤して、外でパソコンを開いて在庫状況や納品予定を確認し、顧客と交渉したりしているでしょう。職種によって程度の違いはもちろんありますが、テレワークをできている会社があるなら、できていない会社のできていない理由は、たぶん言い訳に過ぎません。

ICTが発達してきたため、これまで会社という職場でしていたことが、今回のコロナ禍で多くの人が自宅でするように変わっただけのことです。これまでどおりに仕事を割り振り、これまでと同じようなアウトプットを目指す。会社、管理職、従業員がこのサイクルを上手につくる工夫を重ねていけば、テレワークは定着していくのではないかと思います」

※発言内容は個人的見解であり、所属組織を代表するものではありません。

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