新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが広がっていますが、一部ではオンライン上でパワハラがおこなわれているようです。
リモートワーク中だという女性から「部長がグループメールで言いがかりの叱責をしています」と弁護士ドットコムに相談がありました。メールは複数の部署メンバーが共有するグループメールで、ある部長が一人の社員に対しおこなっているそうです。
女性は「多くの面前で叱責するのはパワハラに当たる可能性があるようですが、たくさんの人が目にするメールはどうなのでしょうか」と尋ねています。
またツイッターでも、「リモートワークになって、上司からチャットで詰められる」という報告がありました。チャットで「は?」「○○してんじゃねーよ」など連発されているようで、会社を辞めたいとつぶやいています。
直接の暴言ではなくても、パワハラに当たるのでしょうか。山田智明弁護士に聞きました。
●グループメールやチャットの叱責、パワハラに当たる可能性も
ーーそもそもどこからがパワハラに当たるのでしょうか
パワハラは、厚生労働省の研究会の定義によれば、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」とされています。
この定義から明らかなように、パワハラの成立には面前である必要はなく、オンライン上でも先ほど挙げた定義に該当すればパワハラが成立します。
パワハラに該当するかどうかの基準については基本的に面前の場合と同様です。
例えば、注意をする場合に必要もないのに面前で注意をする場合はパワハラになる可能性が一般に高いとされていますが、同様の考え方はオンライン上の注意がパワハラに該当するかどうかの判断の際にも用いられます。
具体的には、個別のメールで注意をすることが適切なのに不必要に多くの人が目にするグループメールやグループチャット等で叱責する場合はパワハラになる可能性が高いように思います。
●オンライン上のパワハラ、証拠が残りやすい
ーーオンライン上のパワハラも民事の損害賠償の問題になりえますか
面前でのパワハラと同様に、パワハラをした上司や使用者である会社が民事上の損害賠償責任を負うことになります。
かえって、立証の難易度という点では、オンライン上のパワハラの方が容易な面があります。
具体的には、面前の場合には、相手方が問題となった言動をした事実を否定した際は、動画や録音等の証拠がない限りは立証が難しいことが多くあります。
しかし、メールやチャットなどオンライン上の場合は、証拠保全をしやすい点で立証が容易という側面があります。
2020年6月からは、労働施策総合推進法の改正により、パワハラ防止のための雇用管理上の措置が事業者に義務付けされた部分が施行されました。また、精神障害の労災認定基準にパワハラが明記されました。
今後は、事業者においてもパワハラ防止措置を積極的にとることが求められます。