美味しいカレーが出てくる店で、たくさん食べようと大盛り(無料)を注文。しかし、ご飯が多すぎて食べきれず、残してしまう羽目に。それだけでもしんどいが、なんと経営者の店長から、「なんで食べきれないのに大盛り頼んだの。君みたいな人に来てほしくない」と激怒され、出入り禁止を告げられてしまった。
これは、首都圏の大学生ケンタさんが商店街の小さな洋食店で体験したエピソードです。
他の店員からは慰められたものの、ケンタさんは「なんでここまで言われないといけないのか」と釈然としない思いです。
ケンタさんはもう一度、店に行ってみたいという思いもあるそうですが、出入り禁止は法的に正当化されるのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。
●本来、店が自由に決めることができる
「店側と客の間には、一般的に、飲食物の提供とこれに対して代金を支払うという内容の契約が成立することになります。
今回のケースでは、店側が大盛カレーを食べ残した客に対して、以後飲食物の提供を一切拒否する、契約を結ばないという意思表示をしたことになります。
本来、店側がどのような客に対して飲食物を提供するかは自由に決められます。
ですが、今回のケースでは、店側は客が大盛カレーにチャレンジする前に『食べ残したら出入り禁止』ということを予告していません。
店側の『出入り禁止』の意思表示は客にとっては不意打ちでありアンフェアです。
このようなアンフェアな意思表示は、『信義誠実の原則』という民法上の原則に基づいて無効となると考えられます。
ですので、法的に認められないと考えられます」
●当然残す人が出てくることも想定すべき
予告がなければ、どんな場合でも、出入り禁止にはできないのでしょうか。
「店側の予告なしの出入り禁止が常に無効というわけではありません。
例えば客側が、店の中で暴れる、店のものをわざと壊すといったような迷惑行為を行った場合には、このようなことをしてはいけないのは社会常識として当然です。予告なしで出入り禁止にしても認められる場合があるでしょう」
また、店に入ってくることは認めたとして、「以前残したあなたには大盛りカレーを出しません」と注文を拒否することは可能でしょうか。
「そうですね、大盛りカレーの提供に限れば、拒否することも認められるのではないでしょうか。
いずれにせよ、今回のケースは客にとっては『チャレンジ』であって、店側としては、当然残す人が出ることも想定すべきです。このような企画は、集客のために行うものなのですから、残す客を出入り禁止にするという店長の行為は、常識的に見ても首をかしげるもので、店の評判を落とすことになりかねないのではないでしょうか」