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2015年01月27日 12時54分

「有給休暇をいつにするか」企業が決める!? 新ルール案を「労働者」は歓迎すべきか

「有給休暇をいつにするか」企業が決める!? 新ルール案を「労働者」は歓迎すべきか
有給休暇が取得しづらい企業もある

今年の通常国会が1月26日、始まった。さまざまな法案が審議されるが、労働基準法の改正案もそのうちの一つだ。その中には「有給休暇」をめぐる新ルールが盛り込まれる予定だ。低迷している有給休暇の取得率を上げるため、企業に新たな義務を課すのだという。

現在のルールは、労働者が自ら休みたい日を指定して、休暇取得を請求する仕組みだ。企業には一定の条件を満たす労働者に有給休暇を与える義務があるが、労働者の請求がなければ休暇を与えなくても違法ではない。

これに対し、厚労省の労働政策審議会で1月16日に示された新ルールの骨子案によると、一定の日数について「有給休暇をいつにするか」を企業に指定させることにより、労働者に休暇を確実に取得させることを目指すのだという。

この新しいルールが報道されると、ネットでは「子供の急な発熱時に取得出来なくなるの?」「今以上に会社都合が優先されそう」と否定的にとらえる意見もみられた。はたして、新ルールで労働者の待遇は改善するのか。労働問題にくわしい山田長正弁護士に聞いた。

●労働者にも、使用者にもメリットがある

「現在の労働基準法の枠組みでは、原則として、労働者が有給休暇をいつでも取得できます。

使用者側(企業)が取得時季(時期)を変更できるのは、その有休取得が『事業の正常な運営を妨げる』ような場合に限定されています」

労働者の有給休暇の取得時季を、企業が指定することになれば、かえって労働者に不利になってしまうのではないか。

有休取得を促進させたいのであれば、いつ取得するかは労働者の自由にまかせたままで、企業に有休取得の促進を義務づける制度にすればよいのではないだろうか。

「さすがに、それは使用者側の負担が重すぎると考えられたのではないでしょうか。今回の案は、労働者と使用者どちらのことも考慮した、いわば『折衷案』のようなものです」

具体的に、双方にどういったメリットがあるのだろう。

「時季指定が使用者の義務になるということは、逆に言えば、場合によっては繁忙期に長期間休む人を減らせるということですから、企業側にも生産性向上などのメリットがあると考えられます。

また、これまで有給取得率は低いのが現状だったわけですから、労働者にとっても、時季を指定されるとはいえ、有給休暇をきちんと消化できるのはメリットです。また、骨子案では、努力義務にとどまりますが、使用者側は、取得時季について労働者の意思を尊重するよう求めています。

このように、使用者・労働者の両方にとってメリットが生まれると考えられますので、結果的に有給取得は促進されるでしょう。

ただし、そのためには、企業としても、従業員の希望を取り入れて休暇日を設定したり、休暇中の代替要員を確保する等、細やかな支援をしていく必要があるでしょう」

●法改正だけでなく、企業は「意識改革」を

一方で、山田弁護士は、懸念すべき点もあるという。

「従前は、有給休暇の計画的付与の制度がありましたが、中小企業ではあまり活用されない状況でした。今回の改正により指定義務を負わせたとしても、本当に事態が改善されるのか疑問がないわけではありません。

いずれにしても、計画的付与がなされている場合、法改正により一定日数の指定義務が免除される余地もあるようですが、この点も法による一定の手当が必要でしょう。

そもそも、少ない人員で業務をこなしている会社だと、有給休暇取得者が出たら社内業務が回らなくなるとして、有給休暇の指定をしない可能性もあります。

また、たとえば(1)年末年始など、就業規則上もともとある休日をあえて有給休暇日として指定したり、(2)就業規則上の休日について、就業規則を変更する等により、わざわざ労働日に変更した上で、有給休暇日として指定したりするケースも考えられます。

このような場合は、労基法違反等のために有給休暇の指定が無効とされる可能性があります。こうしたケースが出てこないようにしなければなりません」

もし、そんなやり方が横行すれば、事態は改善されないだろう。根本的な解決につなげるには、どうすれば良いのだろうか?

「『有給休暇』について、日本社会の意識改革を進めることが大切です。たとえば、観光庁、内閣府、厚生労働省、経済産業省が共同して提唱・推進している『ポジティブ・オフ運動』のように、休暇をより前向きに捉えようという運動が広まれば、職場での理解が得やすくなると思います」

山田弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

山田 長正弁護士
山田総合法律事務所 パートナー弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
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