月に1回、バイト先の店舗が営業を終えた午前0時すぎに召集される深夜ミーティング。終電の時間までに終わらず、始発まで待つこともーー。ある男子学生が、バイトのブラックな実態について、ヤフー知恵袋に投稿していた。
投稿によると、このミーティングのために店舗にやってくるバイトがいるにもかかわらず、電車代などの交通費や、時給も支払われないそうだ。次の日は学校の授業があるが、店からは、「俺たちも朝から仕事なんだよ。状況は一緒だろ」と参加を強制されているようだ。
他にも、ネットの投稿を探すと、18歳未満が参加させられているケースや、深夜ミーティングを親が心配するのでバイトを辞めたいといった切実な悩みが投稿されていた。
無給で交通費のでない深夜ミーティングを強制することは、法的にどんな問題があるのか。水野順一弁護士に聞いた。
●深夜ミーティングは「労働時間」といえるのか
「もちろん問題があります。仕事のためのミーティングに参加させられる以上、給料や交通費がもらえないというのはおかしいです」
水野弁護士はこのように切り出した。
「まず、深夜ミーティングについては、『労働時間』といえるかが問題となります。労働契約は、労働の対価として賃金(給与)を受け取る旨の契約ですので、原則として、実際に働いた時間に応じて賃金が発生します。
逆に言えば、当たり前のことですが、働いていない時間については、賃金が発生しないということになります。バイトの内容が仮に飲食店の接客業等だとすると、ミーティングは本来の業務外の行為であるため、働いていたといえるのかが問題となります。
実際に働いている時間を『(労基法上の)労働時間』といい、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい」、「使用者の指揮監督命令下に置かれていたものと評価できるか否かにより客観的に定まるもの」と解されています(三菱重工長崎造船所事件判決)。
裁判例では、接客業や観光バスの運転手等の待機時間やガードマン等の仮眠時間、仕事のための準備や後片付けなどが、『労働時間』にあたるかが問題とされています」
では、深夜ミーティングは、『労働時間』にあたるのか。
「本来のバイトの業務以外の活動ですが、業務に関するミーティングであり、出席も強制されているので、使用者である店の指揮監督命令下に置かれていたものと評価でき、『労働時間』にあたると考えられるのが一般的でしょう。ですから、拘束された分の時給は支払われるべきだと思います。なお、地裁の判例ですが、業務に関する研修会の時間を『労働時間』と認定したものもあります」
深夜であることは、どう影響するのか。
「『深夜労働』にあたるので、使用者は割増賃金を支払う義務が発生します。割増賃金は通常の賃金(時給)の1.25倍になります。深夜労働は、原則として午後10時から午前5時までの間が対象になります(労基法37条4項)。
また、長時間バイトをした後にミーティングに参加した場合には、いわゆる残業代が発生する可能性があります。『労働時間』については、原則として、1週40時間かつ1日8時間を越えてはならないとされており(労基法32条)、それを超える『時間外労働』については、割増賃金が発生します(労基法37条1項)。これも原則として、通常の賃金(時給)の1.25倍になります(1.5倍になる場合もあります)。
『深夜労働』と『時間外労働』が重なる場合には、割増率が合算されるので、通常の賃金(時給)の1.5倍になります(労規則20条)。ちなみに、交通費は、労働契約で決まっていれば支給されるべきですが、割増しはありません」
●日にちと時間を記録しておこう
未成年だった場合に注意すべき点はないのか。
「未成年者については、原則として、15歳になった日以後の最初の3月31日が終了するまで雇うことが禁止されています(労基法56条1項)。子役のタレントなど例外もあります。また、18歳未満の者については、『時間外労働』や『深夜労働』は禁止されています(労基法60条、61条)。禁止といっても、もちろん実際に働いた分は請求できます。」
賃金を請求する際に、気をつけるべき点は何か。
「未払いの残業代等の賃金は、2年間で時効により消滅してしまうので、請求したい場合は注意しておきましょう。
また、深夜ミーティングも含め、今後、請求するときのために、実際に働いた日にちと時間をなんらかの記録に残しておきましょう。タイムカードなどがあれば、それを写真に撮っておくのが望ましいですが、タイムカードがそもそもないとか、打刻させてもらえないこともあると思います。
PCを使うバイトであれば、ログイン時間とログオフ時間が記録されるため、その記録をとっておくこともできますし、仕事の始めと終わりに自分の携帯などにメールを送るなどもよいと思います。ただ、現実の問題として、深夜ミーティングに関しては、このような記録をとっておくのは難しいでしょう。そのような資料がない場合でも、最低限日記や手帳などに仕事の開始と終了の時間をメモすることは必要でしょう」
水野弁護士はこのように話していた。
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