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学生を無給または最低賃金以下で働かせるインターンシップは適法なのか

学生を無給または最低賃金以下で働かせるインターンシップは適法なのか

主に大学生が、就職活動が本格化する前に、企業での就業体験をするインターンシップという仕組みがある。

就職活動の前に各企業の様子がわかる、優れた働きぶりを見せれば内定に繋がりやすくなる、などの理由から近年学生の人気を集めており、「2011年4月入社学生企業動向調査」(en学生の就職情報)によると、2011年卒の「インターンシップに応募した学生の割合」は54.9%に達していた。

ところが一部の企業では、学生に対しインターンシップであることを理由として、時給にすると最低賃金を下回るような非常に安い賃金、あるいは無給で働かせているような事例があるという噂を聞く。そのような事例でもインターンシップ生としては、「職場体験をさせてもらっているので文句は言えない」「とにかく内定がほしいので企業と揉めたくない」という心理があるようで、非常に安い賃金あるいは無給であってもインターンシップを続ける学生はいるようだ。

しかしインターンシップといえども、実際に出社して何かしらの業務を行なっているのであれば、アルバイトのように賃金を貰うべきではないのだろうか。企業がインターンシップと称して、学生を最低賃金を下回るような低賃金、あるいは無給で働かせることに法的な問題はないのか。労働問題に詳しい本橋一樹弁護士に聞いた。

●インターンシップ生が労働者に該当する場合、無給や最低賃金以下で働かせることは違法である

「就業体験という名目であっても、インターンシップ生が、単なる実習生ではなく、労働基準法第9条の労働者とみなされる場合には、当然、労働基準法の適用を受けるので、使用者には賃金支払の義務が発生することになりますし(労基法24条)、最低賃金法の適用も受けることになります。(本文とははずれますが、その他、労働安全衛生法や労災保険法等も適用されることになります)」

「従って、インターンシップ生が労働者とみなされる場合には、無給や最低賃金以下で働かせることは違法ということになります。」

●インターン生が労働者に該当するかどうかは、使用者との指揮命令関係の有無や、インターンでの作業が企業の利益につながったかなどの事情によって判断される

「では、労働基準法第9条の労働者とみなされるかどうかの判断はどのようにされるのでしょうか。平成9年9月18日基発第636号(労働省の行政通達)は、インターンシップにおいて、(1)実習が見学や体験的なものであり、インターンシップ生が使用者から業務に関する指揮命令を受けているとは解釈されないなど、使用従属関係が認められない場合には、労働者(労基法9条)に該当しないと考えられる (2)他方、直接生産活動に従事するなど、当該作業による利益・効果がその事業場に帰属し、かつ、事業場とインターンシップ生との間に使用従属関係が認められる場合には、そのインターンシップ生は労働者に該当すると考えられる、としています。」

「要するに、指揮命令関係の有無(仕事の依頼、業務従事の指揮等を断ることができるか等)、インターンシップ生の作業によって企業側が利益・効果を上げたか(パソコンで作成したデータなどを企業のものとして活用してしまう等)、といった事情を総合判断して、労基法9条の『労働者』とみなされるか判断されることになります。」

●使用者側が最低賃金以下で働かせた場合、法的に賃金支払を請求することは可能

「従って、上記の基準によって労働者とみなされれば、法的には、インターンシップ生は、企業に対して最低賃金以上の賃金の支払いを請求することが可能です。」

「もっとも、インターンシップ生にとっては、インターンシップを就職活動の一環という認識を持っている方も少なくないのではないかと思われますので、現実的には、企業側に法的要求をしにくいという事情はあるかもしれません。」

●企業側はインターンシップという名目でただ働きをさせないように注意すべき

本橋弁護士が指摘しているとおり、インターンシップ生の立場からは企業側に法的な要求はしにくいかもしれないので、もし違法なインターンシップに遭遇した場合は、大学の就職課や周囲の人に相談してほしい。

また企業側は、インターンシップの内容次第でインターン生は労働者に該当することを認識し、相手が学生だからといってインターンシップという名目でただ働きをさせるようなことがないよう、その運営管理にはくれぐれも注意が求められる。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

本橋 一樹
本橋 一樹(もとはし かずき)弁護士 本橋一樹法律事務所
1962年、東京都世田谷区生まれ。94年に弁護士登録(東京弁護士会)。東京を拠点に活動。2004年から2008年にかけて、非常勤裁判官(民事調停官)を務める。得意案件は離婚、遺産相続、消費者被害、建築紛争など。趣味は時代劇やオーディオ。

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