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石原慎太郎氏に相続問題? 4人の子以外の「婚外子」がどう影響するか
石原慎太郎氏(2018年12月18日、弁護士ドットコム撮影)

石原慎太郎氏に相続問題? 4人の子以外の「婚外子」がどう影響するか

2月1日に亡くなった石原慎太郎氏の遺産をめぐり、相続問題が浮上するのではないかと週刊誌などで報じられている。

女性セブンによると、石原氏には、婚外子の存在があるという。石原氏には、伸晃氏、良純氏、宏高氏、延啓氏の4人の子がいるが、加えて、銀座の高級クラブの女性との間に生まれた婚外子(非嫡出子)の男性(現在30代)がいるというのだ。

過去の報道によると、石原氏は、都知事選に当選した1999年4月、写真週刊誌が「妻以外の女性との間に息子をもうけ、子供は5年前に認知した」と報道したことを受けて、「20年前のことで、私にとって若気の至りというか、不徳というか、事実であるし、そのことについて男として十全の責任をとった」と答えている。

田園調布の土地と建物だけでも2億円以上の価値があるといわれているが、非嫡出子の相続は嫡出子とどう違うのか。どういうトラブルに発展する可能性があるのか。濵門俊也弁護士に聞いた。

●嫡出子と非嫡出子の違い

非嫡出子の相続は嫡出子とどう違うのか。

「非嫡出子(婚外子)とは、婚姻関係にない男女間に生まれた子のことをいいます。

我が国においては、現状としては嫡出子の方が多数派となっていますが、近時の家族の在り方の多様性も反映してか、近年は、非嫡出子の数も増加傾向にあると言われています。

これに対し、嫡出子とは、婚姻関係にある男女間に生まれた子のことをいいます。

ここにいう『婚姻関係』とは、いわゆる『法律婚』のことであり、事実婚である内縁関係は含まれません。

嫡出子と非嫡出子は、生物学上の『子』であることはそのとおりなのですが、法律上の親子関係の観点からは、両者の間には、若干の法律上の取扱いの違いがあります」

●非嫡出子が父親と法律上の親子となるには認知が必要

どんな取扱いの違いがあるのか。

「非嫡出子は、嫡出子と同じく、実の母親の分娩により生まれてきます。

非嫡出子と母親との間に親子関係があることは分娩の事実により明らかなので、法律上の母子関係は当然に発生すると解されています(最判昭和37年4月27日民集16巻7号1247頁)。

これに対し、非嫡出子は、母親が婚姻中に懐胎した子ではないので、父親との間の親子関係が推定されません(民法772条1項)。

ですから、非嫡出子と父親との間には、法律上の父子関係がないことが原則となります。

非嫡出子と父親との間に法律上の親子関係を発生させるには、『認知』という手続が必要となります(民法779条)。

父親が非嫡出子を認知しますと、出生の時にさかのぼって、両者は法律上の父子関係が発生します(民法784条)」

●非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じ

石原氏の場合、認知しているとのことだが、非嫡出子の相続はどうなるのか。

「民法887条1項によりますと、被相続人の子は相続人になると規定されています。

ここにいう『被相続人の子』は、被相続人と法律上の親子関係を有する者をいいますので、嫡出子か非嫡出子かは関係ありません。

つまり、非嫡出子であっても、被相続人との間に法律上の親子関係があるのですから、相続権を有することとなります。

非嫡出子の相続権及び相続分については、次のように考えます。

(1)母親の相続

非嫡出子は、分娩によって、母親との間に法律上の親子関係が発生します。

よって、母親が亡くなり被相続人となった場合には、欠格事由、廃除、相続放棄等の場合を除き、非嫡出子は相続人となります。

(2)父親の相続

他方、非嫡出子と父親との間には、当然には法律上の親子関係が発生しません。非嫡出子に父親の相続権を与えるためには、父親が非嫡出子を認知し、法律上の親子関係を発生させる必要があります。

認知は、戸籍法の規定にしたがって届出をする方法のほか(民法781条1項)、遺言において認知する旨を記載する方法もあります(民法781条2項)。

(3)法定相続分

非嫡出子が相続人となる場合、法定相続分は嫡出子と同じです。

この点に関し、以前は、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする規定があったのですが(民法旧900条4号ただし書)、平成25年の最高裁大法廷決定により、その旧規定は憲法14条反し違憲であるとされました(最大決平成25年9月4日民集67巻6号1320頁)。

それを受けて民法旧900条4号ただし書前段は削除され、現在では非嫡出子の相続分は嫡出子と同等となっています」

●遺産分割協議に参加できず、トラブルになる可能性も

一般論として、非嫡出子がいる場合、どんなトラブルに発展する可能性があるか。

「つぎのようなことが想定されます。

非嫡出子は、嫡出子と共同生活をしていた時期がないことが多いことから、普段のコミュニケーションがとれていないことがあり得ます。

また、遺言による認知も認められていますので、そもそも嫡出子側で非嫡出子の存在自体を認識していないこともあり得ます。

あり得るケースとしては、非嫡出子を遺産分割協議に参加させないで協議をまとめてしまうことも考えられます。このようなケースでは、後々トラブルに発展してしまいますので、十分に調査する必要があります」

プロフィール

濵門 俊也
濵門 俊也(はまかど としや)弁護士 東京新生法律事務所
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。

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