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高級住宅街、高価な壺や布団を近所で預け合う「相続税対策」…バレたらどうなる?
画像はイメージです(いらすとや)

高級住宅街、高価な壺や布団を近所で預け合う「相続税対策」…バレたらどうなる?

東京都内の閑静な高級住宅街。決して新しくはないが、高級車ばかりの駐車場や、緑あふれる庭からは、タワーマンションの住人にはない、落ち着きと余裕がにじみ出ている。都内のマンション暮らしの主婦・J子さんは、そんな高級住宅街で繰り広げられる相続対策を聞いて驚いた。

J子さんの友人・A美さんの実家は、その高級住宅街にある。A美さんによれば、近所で誰かが亡くなると、壺や皿、絵画などの高級な芸術品や、高級布団などを近所の家に預け合う慣習があるという。「代々住む人が多い土地柄なので、親の代から当然のようにやりとりをしているそうです。『お互い様だから』と彼女は言っていました」(J子さん)。長ければ3年ほど預けた後、再び自宅に引き取っているようだ。

高級な芸術品や布団などは、相続税を計算するうえでどんな意味があるのか。また、もし預けていることがバレた場合、どんなことが起きるのか。大塚英司税理士に聞いた。

●税理士解説のポイント

・今回のケースが発覚したら、仮装・隠ぺいによる重加算税が課される

・高級な芸術品や貴金属なども「相続財産」になる

・税務調査は亡くなった2年後の夏から秋にかけて行われることが多い

●壺や高級布団も「相続財産」とみなされる

「今回のケースが税務署に発覚した場合、仮装・隠ぺいによる重加算税(新たに納めることになった税金の35%)の課税は避けられないでしょう。

J子さんの友人の話は、相続税を逃れるために、税務調査が終わるまで預け、その後に戻そうという狙いがあるのでしょうが、これは税理士として容認できるものではありません」

壺などの高級な芸術品や布団は、相続財産として申請しなければならないのか。

「そうです。相続税を計算する際には、現預金や不動産だけではなく、高級な芸術品や貴金属などの金銭的な価値があるものについては、相続財産に計上しなければなりません。また、日常生活で使っている家財についても、お金に換算できるものは相続財産となります。

J子さんの友人は、そこを認識した上で、税務調査の時においてもバレない様に、相続財産から除いて相続税の申告を行なったのでしょう。相続税申告における税務調査は、一般的には亡くなった年の2年後の夏から秋にかけて行われると言われています」

そこで、この高級住宅街では、税務調査が終わる期限を見越して、3年を目安に預けているのだろう。

●仮装・隠ぺいによる「重加算税」の課税

「ただ、この高級住宅街の住人の皆さんには大きな勘違いがあるようですが、税務署は実物財産の有無だけで、亡くなった被相続人の財産状況をみているわけではありません。税務署は、その職権によって銀行から被相続人やその相続人の預金の状況を確認し、把握することが可能です。

高級な芸術品や布団などの大きな財産を買うために通帳から多額の引き出しを行っている場合には、その引き出しの記録について、税務調査においてしっかりと追及をしていきます」

税務調査で発覚した場合、どうなるのか。

「税務調査の結果、その預けていた財産が判明したときには、修正申告を行い、正しい税額とそれに対応する過少申告加算税(10%〜15%)と延滞税(平成30年は2.6%)を納税しなければなりません。

また、今回のケースの様に、わざわざ近所の家に預けていたとなると、故意に相続財産から除いていたことは明らかです。過少申告加算税に代えて、仮装・隠ぺいによる重加算税(新たに納めることになった税金の35%)の課税は避けられないでしょう」

【取材協力税理士】

大塚 英司(おおつか・えいじ)税理士

中央大学商学部卒業。税理士法人トゥモローズ代表税理士。世界四大事務所であるEY税理士法人出身。大企業の法人税務から相続・不動産等の個人税務まで幅広くサポートできる稀有な存在の若手税理士。

事務所名   : 税理士法人トゥモローズ

事務所URL:http://tomorrowstax.com/

(弁護士ドットコムニュース)

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